シマさんは、70年代や80年代のロックが流れるロックDJイベント「The 80s Rock Disco」を不定期で開催している。

 そのイベントで実感するのが、イントロの大切さだという。

「イントロで大事なのはやっぱりインパクト。インパクトのあるイントロは、流れた瞬間に、皆さん素早く反応してくださいます」

 もちろん過去の有名曲にも、ザ・ビートルズの「ハード・デイズ・ナイト」や沢田研二の「勝手にしやがれ」など、イントロが短い名曲はいくらでも存在する。それでも、印象的なイントロで人々を惹きつけることは、ヒットを生むための重要な要素だった。

「たとえばT.REXの『20センチュリー・ボーイ』やディープ・パープルの『ブラック・ナイト』、クイーンの『ウィ・ウィル・ロック・ユー』、ヴァン・ヘイレンの『ジャンプ』。これらの曲はイントロから強烈なインパクトがあり、だからこそ今もCMなどに使われるのだと思います。日本でも、久保田早紀の『異邦人』あたりも、瞬時に曲の世界に引き込むすごいイントロですよね。イントロにはそこから続く曲へのワクワク感を盛り上げる役割もあり、とても重要視されていたと思います」(シマさん)

 ところで、こうした変化は意外な人たちにも影響を及ぼす可能性がある。

「時代の流れでギターソロやイントロが存在する曲がなくなってしまうと、エアギターができなくなってしまうので、困ってしまいます」

 と語るのは、14年、18年と2度にわたりエアギターの世界チャンピオンの座についた女優の名倉七海さんだ。

「エアギターの競技では、1分間で曲の世界観をどれだけ表現できるかを競います。私も自分のパフォーマンスのために、大好きなメタリカやジューダス・プリーストの曲のギターソロやイントロのフレーズを何度も聴きまくって、良いフレーズがないか日々探してきました。そこが飛ばされるというのはショックだし、もったいない」

 名倉さんは、ギターソロやイントロを楽しむことは、読書にたとえると「行間を読む」行為に近いと言う。

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