唯一無二の鋭い切り口でテレビや著名人を批評したナンシー関。本誌連載「小耳にはさもう」を見ると、没後20年を迎えた今も、その独自の世界観は新鮮だ。新庄剛志さんがメジャー移籍を果たした際の連載(399回 2001年3月9日号)を再掲する。※敬称略。名前、肩書などは、当時のまま掲載しています

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「ただ、人柄に関しては『ナイスでフレンドリー』と評価は高かった」

※二月十八日 ニューヨーク・ポスト紙番記者による、メッツ新庄評。実力に関しては厳しい指摘を受けるも、人間性は褒められる

 アメリカに渡った新庄のことを伝える日本のスポーツ新聞は何か半笑いである。新庄がまた、フェラーリオークションだとか(渡米前だけど)、赤いリストバンドにダメ出しされたとか、半笑いを呼ぶようなネタ提供をしているんだけど。「新庄メジャー挑戦、やっぱり失敗」という結果に向かっての布石というかスジ振りなんだろうな。

 もう、メジャーリーグに在籍している日本人選手を全員挙げることが難しいくらいである。私はもうわからない。最近では、あんまりみんなが「ゆくゆくはメジャー」を希望するもんで、日本のプロ野球の存続を危惧するような意見も出ているようであるが、とりあえず基本的には「メジャーに挑戦」は前向きですばらしいチャレンジである。現状(高い年俸や安定したポジション。このままいればしばらくは安泰という保障)を捨ててまで新天地に挑むという「ロマン」は、結果がどうであれ、「いい話」であったのである。そんな、立派一辺倒の「メジャーに挑戦」に「半笑い」という受け止め方が導入されたのは、「日本人選手のメジャー進出」に対する成長のあかしかもしれない。これ、新庄が本当にレギュラーポジション獲(と)って活躍したら、もうひと段階進むと思う。イチローの成功はきっと感動なんかを呼ぶのだろうが、新庄の成功は爆笑を生む。ちゅうか「うける」な。

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