霊感商法に関する特集の第1弾が掲載された「朝日ジャーナル」1986年12月5日号
霊感商法に関する特集の第1弾が掲載された「朝日ジャーナル」1986年12月5日号

<三千万円を受領した後、先生は「霊薬と壺をあげましょう」といって、「高麗人参三四三個」「高麗大理石三個」預かりという保管書を発行してくれた。つまりB子さんに三千万円を献金させたあと、人参、壺の正常な売買があったように偽装したのである>

 当時、取材班の一人だった藤森研・元朝日新聞編集委員が説明する。

「霊感商法の手口について、脱会者に何人も会って聞いています。印鑑の販売員たちは客の家族構成や預貯金など身辺情報を巧みに聞き出し、先生に事前に伝えてある。だから初対面でもお見通しなのです」

 霊場で先生は「ご先祖様に祈って聞いてきます」などと言って中座する。別室で先生は「タワー長」と呼ばれる上司に客の状況を報告し、説得のための言葉や、出させる金額を相談しているのだ。一方、被害者について藤森氏はこう語る。

「40代、50代の女性が多かった。夫に先立たれるなど不幸や不安の最中に訪問を受けるケースが目立った。被害者に会うことが長期間にわたる取材のパッション(情熱)になっていきました」

 霊感商法を警察が摘発し、統一教会との関係をあぶり出した事例もある。

 83年に青森県で50歳の女性に対し、「亡夫の霊」「水子の霊」が出たと脅した霊感商法グループのA(36)、B子(31)、C(31)の3人が有罪となった恐喝事件だ。87年1月30日号で詳しく報じているが、手口のひどさが際立つ。

 被害者は青森県内に住むP子さん。農家に嫁いだが生計は苦しく、2児をもうけた後は、中絶をくり返さざるを得なかった。前夫はがんで亡くなり、6年後に再婚した現在の夫も交通事故で脳挫傷を負い、言語障害の後遺症のため仕事ができなくなった。

 82年秋、自宅に「グリーンヘルス」という会社の印鑑販売員がやってきて「私の会社の印を使えば運が開ける」などと言った。P子さんは印鑑3本セットと実印を購入。販売員は2時間ほどいて、P子さんの身の上話を聞いて帰っていった。

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