週刊朝日 2022年8月12日号より
週刊朝日 2022年8月12日号より

「一覧にある企業は政府の対策で対象となる可能性が高い。ポイント事業は冬も継続される可能性があります」(同)

 仮に電力会社を替えて電気代が下がっても、ムダに電気を使っては本末転倒。家事アドバイザーで、情報サイト「All About」の節約ガイドも務める矢野きくのさんに、家電の上手な使い方を聞いた。

「大まかで構いませんから、どの家電がどのくらいの電気を消費するか把握するのが基本です」

■エアコン、照明、冷蔵庫で節電を

 経産省の資料によると、夏の夜7時ごろはエアコン、冷蔵庫、照明で家庭で使う電気使用量の6割超を占める。エアコンは、いかに体感温度を下げられるかが大事だという。

「設定温度はあくまでエアコンが感知する温度。室内にいる人が涼しいと感じられるなら、高くてもいい」(矢野さん)

 体感温度を下げるには扇風機の併用がおすすめだ。人がいる場所に冷気を送る目的で使うと効率的だという。

「扇風機を使えば、エアコンの温度を2度前後上げても涼しく感じられるはず。設定温度を1度上げるだけで約10%の節電効果があるとの試算もあります」(同)

 フィルターの目詰まりも消費電力が増える原因。シーズン前に業者に頼んで掃除してもらい、その後2週間に1度は掃除機できれいにするとよい。冷蔵庫は、扉を開け閉めする回数や時間を減らせるかが重要になる。

「冷蔵庫の消費電力が最も増えるのは、扉の開け閉めで上がった庫内の温度を下げる時。開閉の回数を減らせるように、何がどこにあるかを整理する。よく使う調味料などは、かごやトレーにまとめてグループで収納しておくと必要な時にすぐに取り出せます」(同)

 照明は、白熱球が残っている場合はLEDに替え、つけっぱなしを防ぐなど基本を押さえることが節電の近道だ。

 それにしても、厳しい状況はいつまで続くのか。エネルギー事情に詳しい国際大学の橘川武郎教授は「電力需給がひっ迫する状況は、あと10年程度は続く」と予想する。

「電力自由化が今の状況を招いたとも言われますが、根本的には、再生可能エネルギーの普及や原発再稼働の遅れ、脆弱な送電線といった、原発を中心に据えた従来の電力政策が招いたものです。太陽光の普及の伸びしろは限られ、期待される洋上風力も設置までに8年程度が必要です。状況の改善には時間がかかります」

 まずできることから始めよう。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2022年8月12日号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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