牧原出さん/東京大学先端科学技術研究センター教授(日本政治史)
牧原出さん/東京大学先端科学技術研究センター教授(日本政治史)

 安倍晋三元首相ほど評価が分かれる政治家はいないだろう。東京大学先端科学技術研究センター教授(日本政治史)の牧原出さんに“安倍政治”の功罪を聞いた。

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 まずは7年8カ月の間、外交の最前線に立ち続けたということは評価できます。安倍氏にとって重要なのは、経済や通商ではなく、安全保障を軸にした外交だったと思います。特に日米関係を重視して中国やインド、ロシアに対応していった。その姿勢を最後まで貫いたことは日本外交にとって今後に引き継ぐべき財産となりました。

 この間、米国ではトランプ政権が誕生し、日本にも強い圧力をかけてくる可能性がありました。安倍政権は首相がトランプ大統領と個人的に信頼関係をつくりました。2015年には安全保障関連法を成立させ、米国を始めとする自由主義諸国に明確に貢献する方針を打ち出せました。

 安保法制は内政的にみればもっと反対派に考慮したやり方もあったと思いますが、あれだけの対立があってもやり遂げたことは、米国には信頼に足る同盟国だと映ります。

 このように安全保障に関しては外交の論理を通しましたが、それ以外は国内受けを狙っていたところがあります。

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