高円寺純情商店街(写真:小黒冴夏)
高円寺純情商店街(写真:小黒冴夏)

 東京西部を一直線に走る中央線に1922年、高円寺・阿佐ケ谷・西荻窪の3駅が誕生した。それから100年。駅周辺には“中央線文化”と呼ばれる独特の雰囲気が醸成されてきた。その魅力を探る三駅物語第1回。詩人・小説家のねじめ正一さんが高円寺を語る。

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■面白いものはなんでも取り入れるカオスな街

「面白いものならなんでも取り入れようという街です。失敗覚悟で、躊躇せず実行する。阿波踊りを始めて定着させてしまったくらいですからね。高円寺の街そのものが、阿波踊りみたいな感じです」

 そう語るのは、高円寺に生まれ育ち、自身の体験をベースにした小説『高円寺純情商店街』で直木賞を受賞したねじめ正一さん。

 ねじめさんは、子どものころに買いに行かされた洋菓子&喫茶のトリアノンが大好きだという。

「おいしくて量があって安くて。当時は、いろんなケーキの部分を混ぜ合わせて作った“久助”とかいうケーキがありました。庶民向けの工夫ですね。1個でたくさんの味を楽しめる。なんでも取り入れるこの街らしいケーキでした」

■昔ながらの洋菓子は老若男女に人気

軽やかな味わいの生シュークリーム。持ち帰り420円、店内食事427円(税込み/写真:小黒冴夏)
軽やかな味わいの生シュークリーム。持ち帰り420円、店内食事427円(税込み/写真:小黒冴夏)

1960年に高円寺の南側に創業。その後火事にあい、70年に駅至近の現在地に移転した。当時は店頭に提灯をずらりと並べていたという。高円寺らしい(!?)ミスマッチといえる。創業者の安西松夫氏は「フランス菓子を日本に広めたい」と日本人の口に合う洋菓子を開発し続けた。ショートケーキの生クリームだけを食べたいというリクエストに応えるべく、40年前に生シュークリームという商品を開発するなど、客に寄り添う姿勢が愛される秘訣か

魅力的な菓子がずらりと並ぶ。一番人気のショートケーキ、持ち帰り600円、店内食事611円(税込み/写真:小黒冴夏)
魅力的な菓子がずらりと並ぶ。一番人気のショートケーキ、持ち帰り600円、店内食事611円(税込み/写真:小黒冴夏)

トリアノン洋菓子店高円寺本店
東京都杉並区高円寺南4−26−12
TEL 03−3315−1451 営業時間/販売10:00~20:00、喫茶10:00~18:00L.O. 定休日なし

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