作家・コラムニスト、亀和田武氏が数ある雑誌の中から気になる一冊を取り上げる「マガジンの虎」。今回は「pen」と「モノ・マガジン」。

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 昭和に誕生したヒーローの進化は、いまも続く。映画「シン・ウルトラマン」公開後に手に取った「pen」(CCCメディアハウス)6月号は、その判型と紙質を生かした見せ方で、21世紀の進化系ヒーローと怪獣の美しさ、そしてその謎にまで迫ってみせた。

 グッズに特化した「モノ・マガジン」(ワールドフォトプレス)7月16日号は、シン・ウルトラマンの1/8縮尺フィギュア(4988円)の紹介に始まり、「ウルトラマン」フジ・アキコ役の桜井浩子さんなど、出演者や製作者へのインタビューも載せ、読みごたえがある。

 巨大化した長澤まさみが、丸の内のビル街を破壊しながらノッシノッシと歩く姿には奇妙な衝撃と笑いがあったが、あれもテレビ版33話の巨大フジ隊員へのオマージュだという。

 樋口真嗣監督は“狭間”という言葉で作品を語る。「人間と外星人の“狭間”の存在であるウルトラマンから見えてくるのが」何なのか。それを描くのがこの映画の本質だと。

 ヒーロー(英雄)としてのウルトラマンというこれまでの常識を捨ててしまえと宣言するのは、美術評論家の椹木野衣だ。「正義の味方」といったところで、この世界の正義はいまや絶対ではない。

 西島秀俊も、テレビのウルトラ・シリーズは「明らかに怪獣たちの哀しみにフォーカスして撮っている」「正義と悪の二元論ではないというメッセージが流れているんです」と語る。

 円谷プロの企画文芸室長だった沖縄出身の金城哲夫と、TBSから円谷プロに出向していた実相寺昭雄への言及が各所にある。今期の朝ドラは、沖縄をテーマにするなら、金城哲夫の抱えた苦悩と、ウルトラ怪獣たちの哀しみを描くべきだったのでは。ふと思ったりもした。

週刊朝日  2022年7月22日号