auショップの入り口には通信障害を知らせる貼り紙などがあった
auショップの入り口には通信障害を知らせる貼り紙などがあった

 携帯電話大手のKDDIで7月初旬、過去最大規模の通信障害が発生。完全復旧まで86時間以上かかった。緊急通報できなかったり、仕事に差し支えたりする人が相次いだ。備えを専門家に聞いた。

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 関東在住の30代の女性会社員はKDDI傘下のauのスマートフォンを使う。7月2日土曜日の朝、スマホのアンテナの表示が消えた。

「機内モードのオンとオフを繰り返し、電波をつかもうとしたがだめだった」

 女性は親族や知人と連絡できなくなった。自宅でスマホをWi-Fiに接続して、メールなどは使うことができた。そして、通信障害が発生していることを知った。

「その日は外出をできるだけ控えた」

 KDDIの通信障害は2日の未明に発生した。KDDIは1日後に復旧見込みを公表したが、音声通話などが利用しづらい状態が続いた。完全復旧宣言は5日午後3時半過ぎにずれ込んだ。

 通信障害は全国で最大3915万回線に影響した。物流や交通、気象データの送信、金融機関のATM(現金自動出入機)、医療や訪問診療の現場にも影響し、緊急通報もつながらなくなった。最近はネット通販のサイト利用の際など、本人確認のため二段階認証コードがSMSでスマホに送られてくるが、これも使えなくなった。

 金子恭之総務相は会見で「同様の事案が二度と生じることのないよう、抜本的な検討が必要である」などと話した。

 KDDIと同様に独自の通信網を持ち、「キャリア」と呼ばれるNTTドコモやソフトバンクなどでも通信障害は起こり得る。大規模な自然災害では、特定のキャリアの携帯電話の基地局が被害を受ける可能性もある。どんな備えをしておけばいいのか。

 携帯電話に詳しいジャーナリストの法林岳之さんは「東日本大震災のときも携帯電話がつながらないという話があった。別のルートを持っておくといい」と話す。

 携帯電話を2台持ち、メインがドコモ系なら、サブはKDDI系かソフトバンク系などにすれば、リスクを減らせる。ただ、2台以上持つのはコストがかかるうえ、荷物にもなる。

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