ワークマンの店舗
ワークマンの店舗

 いろいろなモノの値段が上がり、家計を直撃している。食用油や食パン、菓子、調味料など、7月以降も次々と値上げが予定されている。

【図】価格の据え置きや値下に努める主な会社はこちら

 帝国データバンクが国内の主な食品メーカー105社を対象に、6月末時点で1月以降の値上げやその予定を調べたところ、年内に値上げされる食品は実に計1万5257品目に達する見込みという。値上げ幅は全体で平均13%に達する。

 外国為替市場では円安が進み、今後さらに多くの品目に広がる可能性もある。円安がさらに進めば、食料や資源の輸入価格は一段とかさ上げされ、生産コストは余計にかさむ。ウクライナ情勢も依然として先行きは見通せず、調達難が厳しさを増す恐れもある。

 だが、値上げが目立つ今こそ、価格を据え置いたり値下げをしたりする戦略は、強みにも売りにもなる。厳しさを逆手にとって、商機に変える逆張りの発想とも言える。

 作業服大手のワークマン(群馬県伊勢崎市)は2月、売り上げの6割を占めるプライベートブランド(PB)の価格を据え置く方針を打ち出した。同社は、2023年3月期は原材料高を受けて最終減益の予想だ。しかし、営業企画部兼広報部長の林知幸さんは「『低価格で高機能』という強みは守る」と強調する。

「作業着や安全靴といった職人などのプロ向けの商品は、以前からお客様の間でも一定の評価を頂いてきましたが、レディース商品やスポーツウェア、アウトドアグッズといった新しい分野への浸透はまだまだ。いま価格を変えることで、こうした新しいお客様が離れてしまうことは避けたい。今年度中はよほどの事情がない限り、値上げするつもりはありません。今期の最終減益予想は、価格を据え置くことの意思表明でもあります」

■客離れを招いた苦い過去教訓に

 同社はかつて、値上げで客離れを招いた苦い過去がある。リーマン・ショック後の厳しい時期、最も安い価格帯の商品を値上げした。すると売り上げはかえって伸び悩んだ。その後、半年から1年かけて元の価格に戻したものの、顧客のイメージを回復するにはさらに時間がかかったという。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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