東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は今季、チーム防御率が12球団で最も高い西武に期待を寄せる。

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 6月終了時点で、パ・リーグは首位のソフトバンクから5位のオリックスまで5.5ゲーム差と大混戦となっている。その中で38勝34敗1分けの3位で6月を終了した西武が一番いいチームになりつつあると感じている。

 セ・リーグでは首位ヤクルトの独走ばかりが目立っているが、そのヤクルトをもしのぐチーム防御率を西武は記録している。6月が終わってのチーム防御率は12球団ダントツの2.37。2018年から昨年まで4年連続でチーム防御率リーグ最下位とは思えないほどだ。その数字は18年から「4.24」「4.35」「4.28」「3.94」と散々だったが、今年は違う。

 先発投手の2.83に対し、救援陣の防御率は何と1.58。その数字を支えているのが、七回の水上、八回の平良、九回の増田だ。3人の防御率は0点台。つまり、六回までリードを奪って3人にバトンを渡せば、ほぼ失点しない計算だ。

 投手陣、特に救援の防御率が良いと、試合を逆算して組み立てられる。先発投手は完投を意識せず、六、七回まで投げ切れればいいとふん切りがつく。攻撃陣にも好影響が生まれる。4点とっても勝てないチームなら、5点とろうと攻撃が粗くなるが、3点とればいいチームなら1点ずつコツコツ積み重ねることができる。しかも終盤まで同点でいけば、勝機が見えるのだから、落ち着いて攻撃に入れる。その相乗効果は計り知れない。安定して勝利を収めるチームは、勝てる試合を確実にモノにする。その意味で投手陣の安定度というのは、チーム成績に直結することが多い。

 高橋光成に外国人のエンス、松本航に与座海人が頑張っている。ここにドラフト1位左腕の隅田知一郎が加われるかどうか。6月までは1勝7敗。私が見ていて、得点圏、特に二塁に走者を置くと、走者の動きを見ようとして首を振りすぎている。どうしても打者を抑える意識が希薄になり、球が甘く入り痛打される。西武の豊田清投手コーチとも先日、立ち話をする機会があって、その話をした。左腕の隅田が加われば、先発陣もさらに厚みが出る。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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