イライザペンシルが生成した「イライザ新聞」
イライザペンシルが生成した「イライザ新聞」

 文章の書き手はもはや人間だけではない。人間と遜色ない文章を書き上げるAIが登場している。記者の仕事はAIに奪われてしまうのか。負けるわけにはいかぬと、無謀ともいえる挑戦に身を投じた。その勝負の行方はいかに?

【写真】東京・高円寺にある「原稿執筆カフェ」がこちら

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 原稿執筆を生業にする者にとって、手ごわい敵になるのか。

<キーワードから約6秒で文章を生成する文章執筆AI>

 東京大の松尾豊教授研究室発のスタートアップであるELYZA(イライザ)が3月に発表した文章執筆AI「ELYZA Pencil(イライザペンシル)」の触れ込みだ。ホームページにアクセスすれば、誰でも簡単に試すことができる。

 記者はただでさえ筆が遅い。恐る恐るページを立ち上げてみた。

 画面に出たのは「ニュース記事」「メール文」「職務経歴書」の選択肢。「どんなジャンルの文章でも対応できます」の姿勢にまず恐れ入る。ジャンルを選択後、キーワードを最大八つまで入力できる。

「ニュース記事」を選択し、「原稿」「執筆」「締め切り」をキーワードにしてみる。記者もAIと同時にスタートしてみよう。どちらが速く、そして正確に書けるか……いざ、勝負。AI執筆スタートのボタンを押すと、記者がキーボードに触れる間もなく、3秒で文章が生成された。

 以下がAIの文章だ。

<『締め切りが迫っているのに原稿が書けない!そんなときどうする?』

 原稿の締め切りが迫っているのに、筆が進まないときの対処法を紹介。締め切りまでの日数を逆算して、やるべきことを洗い出す。また、文章を書きやすい環境づくりをすることも有効である。>

 完成度の高さたるや。ご丁寧に見出しまで。文法的な間違いもない。この勝負、完敗である。

「ストレートニュースであれば、人に取って代わる可能性はあると思います。ですが、AIにこちらが意図する文章を書かせるのはまだ難しい。現状では、文章のたたき台にして、人の手で直していくという使い方がいいと思います」

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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