「日本酒を嗜む会」の会席料理ツアーの様子。(中道あんさん提供)
「日本酒を嗜む会」の会席料理ツアーの様子。(中道あんさん提供)

 家でも職場でもない第3の居場所「サードプレイス」が注目されている。日常のしがらみから放たれ、自分らしくいられる場所に出会うには。

【表】「大人の居場所探し」5つのコツはこちら

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 サードプレイスを勧める『人生が100倍楽しくなる!最強の行動スイッチ』など、多くの著書を持つエッセイストの潮凪(しおなぎ)洋介さん(52)は昨年、SNS上に「50歳からの俺活コミュニティ」を立ち上げた。会社では「私」、家では「僕」、そのどちらでもない「俺」でいられる場所作りの場といい、500人近い仲間がいる。仲間同士で集まり、人の話を聞くことでやりたいことのヒントを見つけるコミュニティーだ。

 いわば居場所探しのアドバイザーでもある潮凪さんは、働き方に対する意識の変化が、多くの人を居場所探しに向かわせたのではないかと言う。

「高度成長期の会社は家族的・軍隊的でモーレツサラリーマンがたたえられ、個性はあまり認められていなかった。それがここ数年、転職市場が活発になり、副業も認められ始めた状況でコロナ禍になり、多くの人が自分らしい生き方は何か考えるようになったと思うんです。その象徴がサードプレイスです」

 サードプレイスを研究している法政大大学院政策創造研究科の石山恒貴教授は、リタイア後の人生が長くなったことが、居場所への関心が高まった一因だという。

「定年を控えたミドルシニアが特にサードプレイスに興味を持っていると実感できる。人生100年時代と言われ、定年後の長い人生をどう生きるか、誰もが考えるようになってきた。その答えがサードプレイスではないかと思っています」

 石山教授の言うとおり「50代になり、これからの人生、本当に私は後悔しないのか?」という思いから、自分の好きな場所を築いたのが中道あんさん(59)だ。26歳で社内結婚。3人の子の成長に合わせるように、40代で再び正社員として働き始めた。51歳のとき始めたブログが評判になり、単行本『50代、もう一度「ひとり時間」』を出版。現在は独立してブログ講師などをしている。

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