岩合光昭 (c)Iwago Photographic Office
岩合光昭 (c)Iwago Photographic Office

 動物写真家岩合光昭さんが見つけた“いい(こ)”を紹介する「今週の猫」。今回は、北海道・函館の「日々修行にゃり」です。

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 函館山麓の荘厳な古寺、高龍寺。この寺に身を寄せる茶トラのオス、その名もトラはお坊さんたちと、とても仲がいい。

撮影/岩合光昭 (c)Mitsuaki Iwago
撮影/岩合光昭 (c)Mitsuaki Iwago

 鐘つきの時間。トラと、彼の毛色によく似た辛子色の袈裟(けさ)を着たお坊さんが、鐘楼に上がる。ぺろりと舌を出し、そばに控えるトラ。さすが慣れているなと思いきや、ボーンと鐘が鳴った瞬間、脱兎のごとく消えた。

 トラにはもう一つ、苦手なものが。近所に強い黄白色のオスがいて、会うと必ず追いかけられる。日々修行、いつか何事にも動じない男になれますよう。

週刊朝日  2022年7月1日号

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岩合光昭

岩合光昭

岩合光昭(いわごう・みつあき)/1950年生まれ。動物写真家。1980年雑誌「アサヒグラフ」での連載「海からの手紙」で第5回木村伊兵衛写真賞を受賞。1982~84年アフリカ・タンザニアのセレンゲティ国立公園に滞在。このとき撮影した写真集『おきて』が全世界でベストセラーに。1986年ライオンの親子の写真が、米「ナショナルジオグラフィック」誌の表紙に。94年、スノーモンキーの写真で、日本人として唯一、2度目の表紙を飾る。2012年NHK BSプレミアムで「岩合光昭の世界ネコ歩き」のオンエア開始。著書に『日本のねこみち』『世界のねこみち』『岩合光昭写真集 猫にまた旅』『ふるさとのねこ』『ネコを撮る』『ネコへの恋文』など多数。初監督作品となる映画「ねことじいちゃん」のBlu-rayとDVDが発売中。

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