60歳を前に新しいキャリアに挑戦し、華々しい活躍を遂げた“アラ還シンデレラ”がいる。でこぼこ道もなんのその。何歳(いくつ)になっても自分らしく前向きに生きるその姿は、やりたいことが見つからない人や一歩踏み出す勇気が持てない人へのヒントやエールになるはず。映画「カメラを止めるな!」で一躍注目を集めた俳優・竹原芳子さん(62)のパワフルな人生訓をお届けする。
【写真】カンヌ国際映画際のメイン会場前で満面の笑みを浮かべる竹原芳子さん
私、手に職をつけないとっていう意識がずーっとあったんです。「これやってます!」っていう確立したものがほしくて。新卒で証券会社に入ったあと、33歳で辞めて人材派遣会社に登録しました。宝くじ売り場の販売員にチラシ配り、栄養ドリンクの試飲販売……。その次は裁判所に就職して臨時事務官に。自分に合う仕事を見つけたくて色々試しましたね。若いときってよく占いに行くでしょう? みんな恋愛を見てもらうのに、私はいつも仕事について聞いてました。
習い事も、水泳、社交ダンス、乗馬、マナー教室などなど、20個ぐらいやりましたよ。フラワーアレンジメントでは、初日から「講師になりたいです!」って言うもんだから、先生に「まあ落ち着いて下さい」って言われました。でも花を挿すたびにすごい方向に飛び出してしまって。マンツーマンの英語教室なんて私の出来が悪すぎて先生が居眠りしてらっしゃったし、どれもうまくいきませんでしたね(笑)。
そんななかで、落語教室は楽しくて続いたんです。一人で旦那さんにもおかみさんにも丁稚(でっち)にもなれて、表現するって楽しいなって。コツコツ努力するのは苦手なのに、道を歩いてるときも「だんさんがあーたらこーたらで」とかボソボソ呟いて熱心にセリフを覚えました。通りがかりの人に「あぁん?」って怪訝そうな顔されて怒られたこともありますけど(笑)。元々は緊張しいで人前でしゃべれなかったんです。結婚式のスピーチも終わるまでドキドキして、ごはんが食べられないくらい。それも落語をやり始めて少しずつ落ち着きました。