Andreas Rantz Getty
Andreas Rantz Getty

 カンヌ映画祭の目玉イベントと言えば、“ランデブー・シリーズ”だ。これは映画の歴史に残るような著名俳優や監督をステージに招き、彼らの映画人生について1時間じっくりと語ってもらう企画。今年はトム・クルーズ、マッツ・ミケルセン、ハビエル・バルデムなどが登場した。1986年の大ヒット作「トップガン」の続編である最新作「トップガン マーヴェリック」の世界同時公開前の5月18日、カンヌの壇上に立ったのがトム・クルーズ。子供のころから現在まで、トムが熱く語った「映画作りの旅」の内容をお伝えする(質問や発言が重複していた部分などは編集部で再構成した)。

【写真】カンヌの檀上で、新作映画などについて熱く語ったトム・クルーズ

(映画との出会いについて)

「4歳の頃から映画に出たい、飛行機を操縦してみたいという気持ちがあった。夢想家で、思いついた話を書きとめたりした。10代のころにはお小遣い稼ぎのために近所の家の芝を刈ったり、雪かきをしたり、クリスマスカードを売ったりした。そのお金を家計の助けにし(小学生のときに両親が離婚、母に育てられた)、映画を見たりした。

  デビューは18歳のとき。これが最後になるかもしれないと思い、すべての制作部門を見学に行って観察し、映画製作について学ぼうとした。子供のころから目標を決めて、それに向かって進む性格だったんだ。映画の現場で見学しながら学ぶ、それが僕にとっての映画教育となった。幸運にも、多くの寛大な人たちと一緒に仕事をさせてもらう機会に恵まれた。

(映画の撮影を通して得た人生哲学について)

知らないという事が恥ずかしいことだと思ったことはない。知らないことは努力して理解しようと努める、それが僕の人生の方針となった。知らない土地に行き、観光客にととどまるのではなく、土地を理解し、そこで現地の人たちと一緒に仕事がしたいと思った。キャリアが成功するにつれ、外国に行く機会も増え、言語の違う人たちと一緒に映画を見る機会も生まれた。例えば初めてフランスに来たのは『レジェンド/光と闇の伝説』を製作した時だが、自分でプロデュースするようになると、常に異なる国、場所で映画を撮影したいと思うようになった。『ミッション:インポッシブル』は異国文化を紹介するというコンセプトの上に立っている。異なる国の建築や文化を知る、事に常に強い関心があった。世界中の人と一緒に体験したいと感じた」 

次のページ
リドリー・スコットは察してくれた