木村草太さん(左)とヨシタケシンスケさん(右)(撮影/写真映像部・高野楓菜)
木村草太さん(左)とヨシタケシンスケさん(右)(撮影/写真映像部・高野楓菜)

 従来のロールモデルの崩壊が進む今、子育て世代の悩みは尽きない。社会や常識をどう教えればいい? 子どものころに教えてほしかったことは? 夫婦間での家事育児の分担は? ともに2人の子どもを育てる父である絵本作家のヨシタケシンスケさん(48)と憲法学者の木村草太さん(41)。二人が考える「子育てのキモ」とは。

【写真】2児の父である絵本作家のヨシタケシンスケさんと憲法学者の木村草太さん

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──子ども時代に戻ったら、やり直したいことはありますか?

木村:現在は過去の選択の結果なので、何かを変えると今の自分が死んでしまう。サイコロの目に例えると、6の目が5回連続で出たから今ここにいる、みたいな状況なので、やり直すと悪くなる気がするんです。

ヨシタケ:わかりやすい! 僕も子ども時代は今よりつらかった。あらゆることが心配で、あんな面倒くさいこと、もう二度とごめんです(笑)。常識を気にして、失敗が怖かった。世の中には、人生の大事な分岐点で間違えると、その先も失敗しかない、ってイメージがあって、大人は脅すのが楽だから、つい子どもにそういうことを言っちゃう。でも、今思えばそんなことなかった。ひとりの人間ができることはそんなに多くないので、いろいろな選択をしても、最終的にその人ができそうな方向に集まっていく。子どものころに教えてほしかったのは、どこまでなら失敗していいかってことと、失敗しても結構なんとかなるぜ、逆に失敗しないと成功までいかないぜ、ってことですね。

木村:まったくそのとおりだと思います。私も子どもにできなかったことをたくさん伝えてます。男女両方の子どもがいる家庭だと、女の子がしっかりしているから男の子が心配になる、という話はよくありますが、父親が、男の子はこんなもんですよ、って言ってあげると、母親も安心します。

ヨシタケ:そうですよね。僕が子どもに失敗談を伝えたいもうひとつの理由は、大人へのハードルを下げたいってこと。子どもは、大人ってちゃんとしてるものだと思うんですよね。自分もそう勘違いしてましたから。僕の父は何かと「自分はこんなにできた」と言ってたけど、「親父も別にできてないな」ってことがだんだんばれてきて、「大人って嘘つきだ」って思ったんです。そういうことに気づく年齢が遅ければ遅いほどこじらせるので、「大人っていいかげんだぜ」って、早いうちに面白おかしく伝えられれば、お互い優しくできるんじゃないかな。

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