横尾忠則
横尾忠則

 芸術家として国内外で活躍する横尾忠則さんの連載「シン・老人のナイショ話」。今回は、アカシックレコードについて。

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 担編さんこと鮎川さんから、「シン・老人」のためのエッセイのリクエストが沢山たまっています。答え易いような、答え難いような質問ばかりで、必ずしも僕の関心事ではないのですが、といって、その関心事があるかと言えば実は何もないのです。だから鮎川さんの関心事に応えようとして、リクエストをしてもらったわけですが、実際は困っているのです。困っているから、助け舟を出してもらったのに、助け舟が用意されると急に乗りたくなくなるのです。

 最近頂いた質問を紹介しましょうか。

「アカシックレコードとは?」

「沢山絵を描いていますが、その保管はどうしていますか?」

「好きな日本人画家は?」

「鎮守氷川神社のオリジナル御朱印帳について」

 などです。では最初の質問を取り上げますが、アカシックレコードのことは先週のこの欄でチラッと触れたことが、鮎川さんの関心事を刺激したのかも知れません。アカシックレコードという用語は一般的に取り上げられることは滅多にないと思います。アカシックレコードという用語は近代神智学の創始者のヘレナ・P・ブラヴァツキーによるもので、西洋オカルティズムでは一般的な言葉です。

 まあ、ここでは簡単に説明しますと、アカシックレコードは宇宙の誕生以来の全ての事象、人間の全想念、全感情が記録されているという世界記憶の概念で、わかりやすくいうと宇宙の図書館だと思えばいいでしょうか。宇宙が誕生して以来のあらゆる存在の情報が記録されている記憶層で、まあここから先はスピリチュアルな世界になっていきます。

 だけどまれにこのアカシックレコードから知恵を得ることはあります。この知恵というか知識はそれを得る人の魂に埋め込まれたもので、一般的な学識を凌ぐものです。現実生活の中で獲得する知識の比ではないのです。では直感みたいなものか、と言われそうですが、確かに直感に似ているかも知れませんが、直感は現世で得た理性とか経験から発せられるもので、知識や教養の範疇からあまり出てはいません。

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横尾忠則

横尾忠則

横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。20年東京都名誉都民顕彰。

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