※写真はイメージです (GettyImages)
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 定年退職までに住宅ローンを払い終え、終のすみかとして住み続ける。そんな“住宅すごろく”の価値観が主流だった時代も今は昔。定年前後に、シニアライフを意識して住み替えを選択する人が増えている。主流は、利便性の高いマンションへの住み替えだ。しかし選び方には戦略が必要だ。

【表】マンションへの住み替えを検討する際の注意点

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 神奈川県在住のAさん(67)。2年前、長年住んだ郊外の戸建てから、駅近の中古マンションに住み替えた。きっかけは、妻(66)の膝が痛むようになり、日々の階段の昇降がつらくなってきたことだった。

 30年前にローンを組んで購入した戸建ては、1階にリビングやキッチン、風呂などがあり、2階が寝室という一般的な作り。寝室を1階に移動し、ワンフロアで生活が完結するようなリフォームも考えたが、大掛かりになるため、相当な費用がかかる。子ども2人は結婚して家庭を持ち、夫婦二人暮らしになって10年ほど。気づけば普段過ごす空間は、リビングと寝室が主で、使わない部屋には物がたまっていた。

 家を建てた当時、周りには子育て中の同世代が多く、新築の戸建てが立ち並ぶ街は活気があふれていた。だが年月が経ち、住人は高齢化し、ここ数年で、売りに出される家も増えた。

「あの奇麗な駅近のマンションが、最近売りに出たらしいよ」

 そんな知らせが舞い込んできたのは、マンションのチラシを夫婦で丹念に見るようになって1年ほど経ったころ。内見に行くと、築5年と新しいだけあり、建物も部屋も奇麗だ。駅から徒歩5分という立地ながら、騒がしくなく落ち着いた環境であることも気に入った。4階建ての低層マンションの最上階で、戸建てにはない見晴らしも大きな魅力だ。居住面積65平方メートルという空間も戸建てと比べると約半分の広さだが、二人暮らしにはちょうど良いサイズに思えた。何より段差が少なく、4階まではエレベーターがある。徒歩圏内にスーパーや病院もあり、老後の暮らしを考えると「住み替えたほうが快適そうだ」と意見が一致した。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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