■1日20分程度のウォーキングを

 適度な運動をすると、糸球体の出口の血管が広がる。これにより血管への圧力が下がり、糸球体への負担を減らすことができるのだ。

「さらに、運動により筋肉や心臓で血流が増え、血管を血液が勢いよく流れる際の刺激で血管の内皮細胞から一酸化窒素が作られる。一酸化窒素には血管を広げて血圧を下げる働きがあるので、より効果的に糸球体にかかる圧を下げ、腎臓を守れるのです」(上月名誉教授)

 具体的な軽い運動として、「腎臓活性1分ストレッチ」を紹介する。

週刊朝日 2022年6月10日号より
週刊朝日 2022年6月10日号より

 まずは、「寝たまま肩ストレッチ」。仰向けに寝たまま鼻から息を吸い、呼吸を止めないように「ツー」と言いながら、5秒かけて両腕を「ばんざい」するように上げる。静かに呼吸しながら、ばんざいの姿勢を10秒間キープ、鼻からゆっくりと息を吸いながら、5秒かけて両腕をもとの位置に戻す。

 次は「寝たままもも裏ストレッチ」。やはり仰向けに寝て、手足は自然に伸ばす。そして右足のひざを直角に立て、ぐらつかないように足の裏を床にしっかりつける。ひざを軽く曲げながら右足を上げ、両手で太ももをつかむ。呼吸を止めないように「ツー」と言いながら、5秒ほどかけて右ひざを胸のほうへ引き寄せる。

 静かに呼吸をして、ももの裏が伸びる感覚を意識しながら、そのまま10秒キープ。鼻から息を吸いながら、ゆっくりと右足のひざを直角に曲げた姿勢に戻る。これを左足でも同様に行う。

 こうしたストレッチに加え、体操、ウォーキングなどの有酸素運動や軽い筋トレを行うことが効果的だという。

 スポーツトレーニングが専門の国士舘大学非常勤講師の青山慎一郎氏によると、1日20分程度、歩幅を広くし早歩きでウォーキングすると、腎機能に絶大な効果がある。

「スクワットも有効です。15回をワンセットとして1日に3、4セットを行えば効果は抜群でしょう。昔は高齢者を中心に運動しないほうがいいと言われていましたが、高血圧の人が降圧剤を飲みながらでも運動すれば血管に効果があると実証されています」と語る。

 人生100年時代は「地味な臓器」腎臓をしっかりケアすることで乗り切ろう。(本誌・村上新太郎)

週刊朝日  2022年6月10日号