田原総一朗・ジャーナリスト
田原総一朗・ジャーナリスト

 ジャーナリストの田原総一朗氏は、先日来日したバイデン大統領が対中戦略を変化させたことを指摘する。

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 5月23日、東京・元赤坂の迎賓館でバイデン米大統領と岸田文雄首相が会談した。対面による本格的な会談は初めてである。

 それに先立つ19日午後、私は官邸で岸田首相と会った。当初は、ウクライナ戦争について、バイデン氏がやるべきことを訴えるつもりであった。だが、その直前に米国で国防総省の幹部たちと長時間にわたって協議した自民党の幹部議員の話を聞き、そのことは話さなかった。

 去年4月、バイデン氏と菅義偉首相(当時)による日米首脳会談が行われた。これまで何度も記しているが、従来とは異なり、欧州の国ではなく日本が最初の首脳会談の相手に選ばれた。これはバイデン氏が日本に特別に期待を抱いていたためだ。

 米国の国防総省筋は、2024年、25年あたりに中国が台湾に武力攻撃すると見ている。そうなれば、米国は中国と戦うことになる。そのとき日本はどうするか。

 1年前の段階では、バイデン氏の対中戦略は定かではなかった。というよりも、バイデン氏は本音では中国と戦いたくなく、中国が台湾に武力攻撃するという事態が生じないように、日本に何とかしてくれと求めたのである。

 日本はそれなりに動いてきた。だが、バイデン・岸田会談の1週間前に冒頭でも触れた自民党幹部議員に聞いた話では、ウクライナ戦争後、米国防総省は対ロシア、中国に対する戦略を大きく変えたという。極めて具体化し、あいまい戦略をやめたというのである。

 幹部議員は、「今や米国はウクライナ戦争でゼレンスキー大統領に援助しているのではなく、言ってみれば、米国のためにゼレンスキー氏に戦わせているのだ」と話した。もちろんロシアを弱体化させるために、である。「中国に対しても、これと同様の戦略をとるはずだ」とも語った。

 そして、23日の日米首脳会談後の会見でバイデン氏は、中国が台湾に侵攻した場合に米国は軍事的に関与するかと問われ、「イエス」と明言し、「それが、我々のコミットメントだ」と話した。従来のあいまいな戦略をやめたわけだ。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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