東尾修
東尾修

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が「週刊朝日」で連載する「ときどきビーンボール」。今回は、OB解説について。

【写真】西武ライオンズのアカデミーによる野球教室

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 このコーナーができて400回目となった。とりとめもないことばかり書いてきた気がするが、ここまで続けさせてもらえているのも読者の方々がいるからこそ。昨今、野球界のOBは発言の場が限られてきていた。その中で、これだけのボリュームをもって伝えさせていただけていることに感謝したい。

 かつて、野球はテレビでも視聴率が20%を大きく超え、地上波で巨人戦が中継されないことはなかった。若い世代の方々は、それすらも知らないだろうが、昭和の野球では、テレビ中継が終わると、ラジオで試合の結末を知る……という方々がいっぱいいた。

 野球界のOBは、テレビやラジオ解説にひっぱりだことなり、それぞれ「あの人の解説がいい」「わかりやすい」などの声も頂戴した。その声とともに、自分の野球への考え方、ファンの方々の切実な思いを体にしみこませ、自分の中での野球というものの視野を広げていった。現役時代には見えなかった多くのことを勉強させてもらった。

 近年、テレビ中継はCS放送へと移行した。地上波での放送は数えるばかりである。ラジオも含め、解説の仕事をしながら全国を飛び回れた時代が懐かしいとともに、今の状況には寂しさを感じるようになっていた。

 ただ、最近になって違う動きが出てきている。それがYouTubeをはじめとする動画配信である。プロ野球界のOBが動画を配信することで、自分の考え、野球にどう取り組んできたか、自身の野球観を伝えることができる場となっている。一番の利点は、時間を気にせずに自分の考えを伝えられること、一つひとつの事象について、立ち止まってしっかり理論構築できることである。

 さらに、昔話もテレビではなかなか言えないことも、その場であれば言える。私もこのコラムの中でいろいろな昔話をしてきたけども、今の野球界との違い、古き良き日のプロ野球ではこんなことがあった……などとこれからも伝えていきたいと思う。

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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