「均等法元年」の大手百貨店の入社式
「均等法元年」の大手百貨店の入社式

 男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年。この年に新卒で入社した女性は、今年58歳前後。そろそろ「定年」を迎える年代になる。そんな均等法世代の女性たちに、建前上は「平等」だった社会人生活を振り返ってもらうと……。

【写真】1985年当時、求人票をチェックする女子大生たち

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「安倍さんが首相時代に女性活躍を打ち出したでしょ。あれがすべてを象徴していると思う。要するに、女性が活躍できていなかったから、あんなことを言いだしたのよ」

 そう語るのは都内の食品メーカーで中間管理職を務めるキヨミさん(仮名=58)。1浪して大学に入学しているので、入社は87年。“均等法2期生”に当たる世代だ。時代はバブル真っただ中で、総合職として入社したキヨミさんは残業もいとわず働き、よく遊び、恋愛もしたという。

「やっぱり同期の男性社員に負けてなるものかっていう意識はあった。一般職の女性社員は定時になると着飾って夜の街に出ていったけど、私たち総合職の女性社員はみんな残業。仕事が終わったら先輩社員たちと飲みに行って、帰りはいつもシンデレラタイムだった。体はきつかったけど、やりがいもあって、必死に働いたなぁ。当時付き合っていたカレシに“仕事と俺とどっちが大切なんだ”なんて聞かれたときは、心の中では“仕事に決まってるじゃない”なんて思ってたわよ」

 入社4年目には希望どおり広報関連の部署に異動。仕事を任されることも増えていく。早くも「主任」やら「チーフ」などに抜擢される同期社員が現れたのは20代後半のころ。

「大学の同級生たちの中には結婚して退社したという人も出てきていたけど、私は仕事がしたかった。同期に負けずに昇進もしたかった。でも、昇進していくのは男性社員ばかり。私のほうが働いているのになんて歯ぎしりするような思いをした」

 キヨミさんは33歳で結婚、翌年に出産。育児休暇を取り、半年後に職場復帰した。

「妊娠がわかって最初に考えたのが、仕事をどうしようということでした。でも生まれてみるとやはり子供が大切になる。半年休んで子育てしたら、このまま育児に専念してもいいなと思ったくらい。でも時短勤務が認められる勤務形態で復帰しました。男性同様に働けなくなったわけで、そのときはもう出世なんて頭の隅にもありませんでした」

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