埋め立てが進む辺野古崎沿岸(右下が軟弱地盤が見つかった海域)
埋め立てが進む辺野古崎沿岸(右下が軟弱地盤が見つかった海域)

 沖縄の日本復帰から、5月15日で50年を迎えた。だが、そこに祝祭ムードはなく、いつまで基地負担を押し付けるのかという沖縄の人々の不満と怒りは高まるばかり。日本人はあらためて、この現実を直視する必要がある。現地取材の結果を、前号に続きリポートする。

【写真】キャンプ・シュワブにダンプカーで運び囲まれる土砂

>>前号:沖縄本土復帰50年「日本は帰るべき“祖国”だったのか」より続く

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 沖縄県名護市の米軍キャンプ・シュワブのゲート前には、ダンプの長い列ができていた。辺野古沿岸を埋め立てるための土砂が次々と搬入されていく光景を前に、新基地建設反対を訴えゲート前で座り込みを続ける人々は、「違法工事はやめろ」「美ら海を返せ」と抗議の声を上げる。

 座り込みに参加した70歳の男性は元漁師だという。表情を曇らせながら、こう訴える。

「大浦湾にはイソマグロの産卵場所がある。この近海には、キハダマグロやビンチョウマグロも集まってくる。海が死んでいくのをただ見ているわけにはいかない」

 埋め立て海域の護岸には消波ブロックが積み上げられ、辺野古の海岸からは沖合の長島や平島が見えなくなった。

「復帰50年」の節目だというのに、この地に祝祭ムードなどは微塵も感じられない。そればかりか、国と沖縄県との対立は、新たな法廷闘争に発展する可能性が高まっている。

 政府の計画では、東に突き出た辺野古崎を挟んで南北の海域約152ヘクタールを埋め立てる。すでに南側の約41ヘクタールは陸地化されたが、問題なのは北側の大浦湾に広がる軟弱地盤だ。「マヨネーズ並み」と言われる粘土層で、最深部は海面下90メートルまで沈み込む。改良工事のため約7万本の砂の杭を打ち込み地盤を強化するというが、国内の作業船の実績は水深70メートルまでにとどまる。専門家は、滑走路など施設ができたとしても地盤沈下の恐れがあると指摘している。

 もはや、新基地は「完成不能」ではないのか。

 防衛省沖縄防衛局は設計変更を県に申請したが、昨年11月、玉城デニー知事は不承認とした。だが国土交通相は今年4月、不承認処分を取り消し、県に是正を指示した。県はこれを不服として、5月9日、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出た。県の主張が認められない場合、国への提訴に踏み切ることも予測される。

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