春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「子供」。

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 よそ様の子供は成長が早い。「よそ様」過ぎるけど、悠仁さまがもう高校生。お姉さんもお嫁に行って一部屋空いたろうし、そろそろ悠仁さまも一人部屋。思春期だから、ノックしないで部屋のドアを開けたりしたら大変です。「ざけんなよっ! 急に開けんなよっ、母ちゃんっ!!」なんてことになるので、紀子さまにはお気をつけ頂きたい。部活は何をされるのかしら。筑波大附属高校に「オチケン」はないかしら。落語に目覚めて「噺家になりたい」なんてことになったら皇室初の落語家誕生! 師匠は笑点のレギュラーになった桂宮治がいい。宮治の弟子で「桂宮様」なんて芸名はどうかしら? ……そんなまくらを最近の高座でふっています。どうか勘弁してください。

 このコラムをまとめた文庫本『いちのすけのまくら』の解説文をうちの長男(16)が書いたことは、以前ここでお伝えしたが、それがまあまあ評判が良い。単行本は購入済みだけど解説文目当てで文庫も買ってくれる人も多いようで、結果として私の作戦がバッチリ嵌まった。売るためならなんでもアリなのだ。

 高田文夫先生が「子供のわりによく書けてるじゃねえか! バウバウ!」とラジオで褒めてくださった。すぐに長男に「高田先生が解説文を褒めてたよ」とLINEすると……2日既読スルー。こちらが痺れを切らして「せめて反応くらい示せ」と言うと「いつもお年玉をくれて、自分を褒めてくれたその高田先生についてネットで調べてた」らしい。結果「……よくわからないけど、凄い人だね」。まぁ、仕方ないか。高田先生を16歳にどこから説明していいものか。

 先日、中2になった次男と日光に行ってきた。小6の日光への修学旅行がコロナで中止になったリベンジ。「日光を見ずして『けっこう』と言うなかれ」。東京はTシャツでもいける暖かさだったので、薄着で行ったら日光は小雨模様の10度。樹齢ウン百年超えの杉が立ち並ぶ東照宮の参道を、クシャミの止まらない極度の花粉症の次男とガチガチ震えながら歩く。寒さと鼻水で「もう『けっこう』です」と日光日帰り滞在3時間。陽明門の前で撮った写真を見たら、私と背丈がほとんど変わらない。9歳の時、エレキングのソフビ人形を欲しがるので「うるさい! 少しは成長したら買ってやる!(怒)」と言ったら、ぐらついていた乳歯を自力で引っこ抜き、口から血を噴き出しながら「ハイ、成長」と前歯を手渡してきた次男。そんな猛者が中2になり「将来の夢・経済的に安定した生活を送る」と書いていた。ホントかよ……。

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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