東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、2試合連続の完全試合目前でのロッテ・佐々木朗希選手の交代に持論を展開する。

【写真】ファンは佐々木が三振をとる度に、Kの文字を球場内で掲げた

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 2週連続でロッテ・佐々木朗希の話になるが、ご容赦願いたい。4月10日の登板で完全試合を達成した佐々木朗希は17日の日本ハム戦で八回までまたもパーフェクト投球で、14三振を奪った。史上初の2試合連続完全試合の可能性もあったが、九回から交代した。

 試合は0‐0であったこともあるが、球数は102球。この交代に賛否両論が出た。どちらの気持ちもわかる。ファンからすれば「二度とない記録だから、せめて九回まで……」と考えるだろうし、佐々木の疲労度を考慮しての交代だとして「井口監督の英断」と受け取る方もいるだろう。よく「あなただったらどうしたか」と聞かれるが、答えなど出ない。なぜなら、佐々木朗希がどんな状態にあったか、前回の完全試合の反動がどこまであったかは、いつも見ている現場しかわからないのだから。

 よく球数がクローズアップされるが、同じ100球でも、どれだけ力を入れたかで疲労は異なる。たとえば、ピンチらしいピンチのない100球と、何度もピンチを背負い、全力投球をした100球は違う。前回の完全試合の時に佐々木朗希がどれだけのパワーを使ったのかもわからない。そしてこの1週間の回復具合はどうだったか。そして疲労がたまった時にどんな兆候が見えるのか。今の体の成長具合はどうなのか。それは第三者ではわからない。確かに八回は肩で息をしているように見えたが、それだけが判断材料ではないはずだ。

 一つ言えるのは、チームと本人の判断の中で、何を最優先としているか。それを互いに明確にして共通理解があればそれでいい。2年かけて球団の育成プランにそって、ようやく3年目の今年は開幕からローテーションに入った。その3年目。首脳陣としては、「1年間ローテーションで使う」ことが最優先なのではないか。そうであるならば、今回の登板で九回まで投げさせ、ダメージが広がり出場選手登録抹消では意味がない。大記録がかかっているからといって、方針を変えるのは得策ではない。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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