入母屋造一部切妻造の御常御殿。建築面積は420平方メートル。大正7年竣工の西洋館が翌年に焼失したので、大正13年に跡地に建てられた。昭和24(1949)年に現在の位置に曳家移築 (撮影/写真映像部・東川哲也)
入母屋造一部切妻造の御常御殿。建築面積は420平方メートル。大正7年竣工の西洋館が翌年に焼失したので、大正13年に跡地に建てられた。昭和24(1949)年に現在の位置に曳家移築 (撮影/写真映像部・東川哲也)

 キャンパス内に、国指定の重要文化財を所有する名門大学がある。なかなか見る機会のない歴史的建造物を訪ねるシリーズ。第2弾は「聖心女子大学」です。

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 久邇宮家とは、伏見宮邦家親王の第4王子である朝彦親王が、明治8(1875)年に創設した宮家。昭和22(1947)年に、GHQの命で皇籍離脱した。

小食堂。天井は高く、寝室より一回り大きな天井画が18点飾られている (撮影/写真映像部・東川哲也)
小食堂。天井は高く、寝室より一回り大きな天井画が18点飾られている (撮影/写真映像部・東川哲也)

 旧久邇宮邸は、大正7(1918)年に竣工。聖心女子大学は旧久邇宮家本邸跡地を取得して、昭和23年に開学した。

御常御殿2階は和洋が混在の造り。寄木張の床が美しい書斎。手前左の壁の前には蓄音機が置かれていたという (撮影/写真映像部・東川哲也)
御常御殿2階は和洋が混在の造り。寄木張の床が美しい書斎。手前左の壁の前には蓄音機が置かれていたという (撮影/写真映像部・東川哲也)

 後に、御常(おつね)御殿、小食堂、正門、車寄せ(附[つけたり]指定)が、重要文化財に指定された。

1階の寝室。格天井には、大正期の俊英・速水御舟、前田青邨らの絵がはめ込まれている (撮影/写真映像部・東川哲也)
1階の寝室。格天井には、大正期の俊英・速水御舟、前田青邨らの絵がはめ込まれている (撮影/写真映像部・東川哲也)

 御常御殿は大正13年に宮家の日常生活の場として建てられたもので、台湾総督府などを手がけた森山松之助が設計した和風建築。現存する唯一の和風宮家本邸で、随所に菊花紋章をモチーフにした飾りが見られる。寝室の天井には、60点の天井画(実物は東京国立博物館に寄託)がはめ込まれている。同大では学習の場として、体育の選択科目(日本舞踊)の授業、箏曲、日本舞踊、茶道、能楽などの課外活動、留学生の日本文化体験で使用している。

釘隠しにも菊があしらわれている (撮影/写真映像部・東川哲也)
釘隠しにも菊があしらわれている (撮影/写真映像部・東川哲也)

 小食堂、車寄せ、正門はいずれも大正7年築。折上格天井と呼ばれる中央部を一段高くした天井を持つ小食堂は、まさに壮麗だ。一般公開あり(不定期・要予約)。(取材・文/本誌・菊地武顕)

週刊朝日  2022年4月29日号