中山祐次郎(なかやま・ゆうじろう)/1980年生まれ。鹿児島大学医学部卒業。消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医(大腸)、外科専門医、がん治療認定医などの資格を持ち、現在は湘南東部総合病院外科に勤務。小説家としての著作に『泣くな研修医』(幻冬舎文庫)など (本人提供)
中山祐次郎(なかやま・ゆうじろう)/1980年生まれ。鹿児島大学医学部卒業。消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医(大腸)、外科専門医、がん治療認定医などの資格を持ち、現在は湘南東部総合病院外科に勤務。小説家としての著作に『泣くな研修医』(幻冬舎文庫)など (本人提供)

 いま、医者を目指す意義とは? 現役の外科医で『それでも君は医者になるのか』の著作がある中山祐次郎さん(41)に話を聞いた。

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──日々、どんなスケジュールで働いていますか。

 日にもよりますが、よくあるのはこんな感じです。午前6時に起床し、家事育児をして出勤し、7時20分に業務を始めます。午前中に手術を1件終え、お昼を10分で食べ、午後にもう1件手術です。その後、夕方の回診、カンファレンス(医師だけの会議)と続き、帰宅するのは20時前後。夕飯や風呂、メールの返事を済ませたのち、気絶するように就寝することもあります。加えて、月に1度は泊まりがけ36時間連続の当直勤務や、月に2~3日の待機(病院に呼ばれたら行ける状態にしておくこと)があります。

──医師はなぜ多忙になってしまうのですか。

 大前提として、病気は土日祝日や夜間を選ばず起こります。患者さんの心臓がある時突然止まれば、起きていても寝ていても、必ず駆けつけるのが主治医の責任です。病院側の体制の問題もあります。今、ほとんどの病院では交代制が敷かれていません。そのため、患者に何か起こった時に、担当医師以外に責任ある治療ができないという事態になるのです。

──新型コロナウイルスの感染拡大で、患者の受け入れ対応に追われる病院の姿が報じられ、医療現場の過酷なイメージがさらに強まっています。

 診療科によって差があります。コロナは呼吸器の病気ですので、感染症内科や呼吸器内科などは極めて忙しくなりました。他方、外科などでは劇的な変化はありません。会議や学会もオンライン化したため、負担が減った部分もあります。

──医師としてキャリアを築くうえで、男女差はありますか。

 残念ながら、ないとは言い切れないのが現状です。妊娠や出産は男性が肩代わりできません。その分、女性医師のキャリアの断絶はどうしても起こりやすくなります。

 診療科による男女差も見逃せません。厚生労働省が公表する数値によれば、消化器外科では女性医師の割合が5%を切るのに対し、皮膚科や眼科は40%近くを女性が占めます。外科の場合、手術に伴う当直や呼び出しが避けられませんが、皮膚科や眼科は緊急で呼ばれる可能性が低いためです。

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