※イラストはイメージです
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 電子マネーなどの普及でキャッシュレス決済が進むなか、硬貨がやっかい者扱いされつつある。金融機関はATMなどで硬貨の入出金に手数料を取り始めた。硬貨には特有の役割もあるのだが……。

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「お店で500円の商品を購入するのに、すべて10円玉で支払おうとしたら、受け取りを拒否されました」

 これは、国民生活センターが2019年末に公表した消費者トラブルの事例。硬貨の支払いは1種類につき20枚までと法律で定められていると回答している。

 その理由は、計算や保管に手間がかかるため。硬貨がたまった場合は、お店に大量に持ち込むのではなく、銀行や郵便局の口座に預貯金するのも一つの方法と同センターは助言する。

 しかし、この助言は時代遅れなのかもしれない。無料でお金を出し入れできた郵便局のゆうちょ銀行が今年1月、ATM(現金自動出入機)で硬貨の出し入れを有料化した。枚数にもよるが、最低でも110円の手数料がかかる。

 メガバンクのATMは一定枚数の硬貨を無料で出し入れできる。ただ、上限枚数は縮小傾向だ。

 金融機関で硬貨の出し入れの有料化が進むと困る人たちがいる。

 駄菓子屋さんは、小銭を持ってくる子どもが相手で、硬貨なしに商売ができない。

 神社は、賽銭が主に小銭だ。硬貨を賽銭箱に投げ入れた音に、御利益を感じる人も少なくない。金融機関での有料化の動きを受け、「神社と、商店を営んでいる氏子が知恵を絞って連携し、硬貨と紙幣を交換する動きが広がっている」(神社本庁担当者)。

 硬貨を多く抱える神社と、お釣りで硬貨のいる商店が紙幣と交換し合う取り組みが、廣畑天満宮(兵庫県姫路市)や八坂神社(茨城県守谷市)などで始まっているという。

 募金活動団体も、硬貨の取り扱いに苦慮する。

 赤い羽根共同募金を運営する中央共同募金会の担当者によると、募金の実施主体は47都道府県の組織で、ゆうちょ銀行から、無料で募金を取り扱える口座の設置が認められているという。ただ、「口座はたくさんあったほうが便利」(担当者)だが、下部の地域組織には認められていないという。盲導犬の育成などに取り組む日本盲導犬協会には、そうした措置が認められていない。

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