室井佑月・作家
室井佑月・作家

 作家・室井佑月氏は、ロシアへの批判が高まる中、日本政府の経済制裁に対する中途半端な姿勢に苦言を呈する。

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 3月31日の東京新聞 TOKYO Webの「年金運用のGPIFがクラスター弾製造企業に投資ロシアも使用した非人道的兵器」という記事を読んで悲しくなった。

「国民の年金資産を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、ロシア軍がウクライナで使用しているとされる非人道的兵器『クラスター弾』の製造企業3社の株式を2021年3月末時点で計約123億円保有していたことが30日、分かった」

 立憲民主党の長妻昭氏の追及で。クラスター弾の殺傷能力は高く、大勢の市民まで巻き込むことになることから世界中から批判されてきた。だからだろう。GPIFが株を持っているというハンファとテキストロンは製造中止を発表しているという。でも、

「クラスター弾を製造している企業へのGPIFの株保有や運用は17年にも明らかになっている」らしい。そして、ロシア軍が使用したことも、だ。衆議院厚生労働委員会で、長妻さんが運用見直しを求めると、後藤茂之厚生労働相は、「個別の銘柄を投資対象から除外する指示を政府が行うことは難しい」と答えたみたいだ。

 ん? では誰の指示や誰の意識で、物事は変えられるのだろうか。年金はその制度を保つことさえ、ギリギリで大変だとはわかってる。けれど、根本のそういったことから考え指示していくのは誰であるのか。

 誰の意識で物事を変えるのか、というなら国民の意識なのだろうし。非人道的兵器にあたしたちのおカネが注がれているという事実を知れば、年金は欲しいけど、別の方法を願う人は多いだろう。

 そして、4月1日の東京新聞には、「首相、サハリン2『撤退せず』」という記事が載った。

「岸田文雄首相は三十一日の衆院本会議で、ロシア極東サハリンでの石油・天然ガス開発事業『サハリン2』から撤退しない方針を明言した」

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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