ゼレンスキー大統領の演説を放送する街頭ビジョン
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「ロシアのウクライナ侵攻の後から、問い合わせが急増しました。毎日10件くらいきます」

【写真】結城市のふるさと納税の返礼品に採用された核シェルター

 そう語るのは、茨城県結城市の板金メーカー「直エンジニアリング」の古谷野喜光専務(51)。問い合わせは、同社が開発した核シェルターについてだ。

 古谷野専務はこう話す。

「日本は被爆国で、東海村(茨城県)や福島第一原発での事故を経験し、サリンガスの被害にもあった。うちの技術や設備を生かして、命を守ることに貢献できないかなと考えていたんです」

 7年前から開発を始め、昨年12月から販売できるようになった。今年1月には、同市のふるさと納税の返礼品として採用された。寄付額は2090万円という。庭に置くタイプで値段は570万円(税別)。

 空気中の放射性物質や、化学兵器による有毒ガスを除去できる特殊フィルター付きの空気清浄機を備えているのが特徴。エアコン、LEDライト、電源コンセントなどもある。内部の広さは3畳ほどで、平時にはテレワークスペースや防音室としても利用できるという。

 完成した当初はそこまで話題にはならなかったが、ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が「我々は最強の核大国の一つ」と強調し、核戦力を含む軍の抑止力を「特別態勢」に移すよう命じると、核兵器使用の可能性について世界中で話題となり、日本国内でも議論されるようになった。そこで同社の核シェルターにも注目が集まったようだ。

 核に関しては、身近な問題として議論されてこなかった日本と比べ、平時から有事に備えている国も多い。

 NPO法人日本核シェルター協会が2002年に調べた核シェルターの普及率(国にある核シェルターで収容できる国民の割合)では、スイスとイスラエルが100%、ノルウェー98%、アメリカ82%、ロシア78%、イギリス67%、シンガポール54%と高い割合で設置している。

 スイスでは、核シェルターの設置が法律で義務付けられており、政府や自治体がその費用の一部を負担しているという。

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