室井佑月・作家
室井佑月・作家

 作家・室井佑月氏は、ロシアのウクライナ侵攻、福島第一原発の廃炉について論じる。

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 3月11日の「毎日新聞」に「露の核使用『可能性はある』 プーチン氏暴発、小川和久氏の想定」という記事があった。記事の中で軍事アナリストで安全保障を専門とする小川和久・静岡県立大特任教授は、「ロシア軍が核兵器を使う可能性はある」といっていた。

「まず考えられるのは、ロシアが北極圏に持つ無人領土への威嚇発射だ。ウクライナ攻撃が目的ではなく、プーチン氏の核兵器使用の『本気度』を世界に見せつけることで、交渉を有利に進めようという狙いだ。次に考えられるのが小型核兵器のウクライナ領土への使用。最も小さな核砲弾でも爆心から半径1~2キロを吹き飛ばし、大部隊1個を壊滅することができる。市民や民間施設も被害を避けられない」

 そうだ、核を使えば被害は甚大になる。戦争に勝つということは、かいつまんでいえば敵の数を少なくすることであるが、プーチンはそこまでするのだろうか。

 いいや、やるかもしれない。ロシア軍は着々と人口の多い首都キエフに向かって進んでいる。この原稿を書いている11日には、中心部まで15キロほどのところまで進んだと報じられていた。

 あたしがこの原稿を書いているのは3月11日。あの痛ましい東日本大震災、福島第一原発の恐ろしい事故があった日である。その日の東京新聞には、「大量の廃棄物 見えぬ行き先」という記事があって、福島第一原発で今もって増えつづける高濃度の放射性物質を含む汚染水などは、東電の広報担当者いわく、

「どうやって処分していくか、正直に言って具体策はない」

 のだそうだ。

 ま、汚染水というより、その数日前にAERA dot.に載っていた記事「福島第一原発『デブリ取り出しは不可能』と専門家 廃炉できないなら『<石棺>で封じ込めるしかない』」によれば、小出裕章・元京大原子炉実験所助教の言葉、

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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