田原総一朗・ジャーナリスト
田原総一朗・ジャーナリスト

 原発事故から11年。ジャーナリストの田原総一朗氏は、廃炉への道筋がいかにあやふやかを指摘する。

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 東日本大震災で東京電力福島第一原発が大事故を起こしてから、今年の3月11日で12年目に入った。

 私は11日の東京新聞の社説を読み、暗然たる気持ちになった。

 社説によれば、事故後、政府と東電が策定したロードマップでは、事故処理は遅くても40年ですべての工程を終えることになっていたが、廃炉までの工程表をよく見ると、何をすべきか、費用がいくらかかるのか、決められていないという。

 事故発生から11年がたって、ようやく最も難しい作業である燃料デブリの試験的な取り出しに2号機から取りかかることになったようだが、溶け出して、冷えて固まった濃度の高い放射性物質の塊であるデブリは、原発3基で計880トンと推計されていて、今後約30年の間、1日当たり80キロずつ取り出さなければならないようだ。これは現実的な数字なのだろうか。そうではないと考えるのが自然だと私は捉えている。

 さらに、原発事故の収束費用は約22兆円で、東電が負担する廃炉費用は8兆円と見積もられている。その中にデブリなど廃棄物の処分費用などは含まれていない、というのだから驚きである。

 東京新聞が、実際いくらかかるのか、と東電に問うと、「何をもって『廃炉』とするのか、その最終形が決まっておらず、明確にお答えするのは難しい」との回答だったという。

 本当に廃炉までの道筋が見えているのだろうか。

 東電の工程表では、「使用済み燃料の取り出し開始まで」を第1期、「デブリの取り出し開始まで」を第2期とし、それ以降、廃炉完了までの第3期に関しては、作業開始から「30~40年後」と期限が切られているだけだそうだ。

 具体的に何をするかが書かれていない現状に対して東京新聞は<東電の工程表を現在の技術レベルに照らして見る限り、今後三十年足らずのうちに、跡地や地域を「安全な状態」にできるとは思えません>と書いている。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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