近藤芳正(こんどう・よしまさ)/1961年生まれ。愛知県出身。76年に「中学生日記」でデビュー。以後、映画、舞台、テレビで活躍。舞台プロデューサーのほか、若手に向けワークショップを主宰し、後進の指導にもあたっている (撮影/小暮誠)
近藤芳正(こんどう・よしまさ)/1961年生まれ。愛知県出身。76年に「中学生日記」でデビュー。以後、映画、舞台、テレビで活躍。舞台プロデューサーのほか、若手に向けワークショップを主宰し、後進の指導にもあたっている (撮影/小暮誠)

 YouTubeドラマ「おやじキャンプ飯」がブレークしている。一人でキャンプをする60歳の男性が主人公という独特の世界観が、コロナ禍の日本で支持を集める理由とは。主演した俳優、近藤芳正氏(60)と監督の馬杉雅喜氏(38)が作品への想いを語り合った。

【写真】馬杉雅喜氏

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──近藤さんが演じるのは、キャンプ場の隅でソロキャンプを続ける男・坂本明夫。元中華の料理人で、無愛想で俗世から距離を置く彼のもとに、毎回、個性的な来訪者が訪れるという設定です。作品が誕生した経緯には、コロナ禍が大きく関わっていると伺いました。

近藤芳正(以下、近藤):そうですね。私の場合、2020年に最初の緊急事態宣言が出て、仕事がストップになってしまって、どうしようかと思っていたときに今作のお話をいただいたんです。キャンプ場でのロケなら密にならないし、坂本の娘が宇宙飛行士という突飛な設定もおもしろいと思いました。

馬杉雅喜(以下、馬杉):僕も、あの年の春に自主映画をやる予定だったんですが、コロナで完全に潰れてしまって。仕事もなくなり悔しい思いをする中で、考えだけがパンパンになって。そんなしんどい時期だからこそ、脳みそを空っぽにできる時間が必要じゃないかって思ったんです。それで、僕自身が大好きな自然やキャンプにチャンスがあるんじゃないかと。大きな事件が起きるわけでもなく、余計なことは何も考えずに見ていられる。でも、見終わった人たちが、ちょっと上を向くことができる。そんな作品をつくりたいという発想でした。

──狙いが当たったのか、シーズン1の「京都編」(20年、全6話)、シーズン2の「和歌山編」(21~22年、全6話)を合わせた総再生数は約790万回(予告編含む)という大ヒットとなりました。

近藤:コロナ禍で、人と人との距離感がこれまでと変わっていった中で、多くの人が一人でいることの大切さや、居心地の良さについて意識し始めた結果かもしれませんね。人と人とのコミュニケーションを続けていくためにも、一度リセットして一人になる時間をつくることが、心の栄養にもなりますから。

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