帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「なぜ東洋医学なのか」。

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【東洋的一】ポイント
(1)西洋医学一辺倒だった私がなぜ東洋医学に着目したか
(2)西洋医学は分析的だが、東洋医学は生命を全体的に診る
(3)東洋医学には西洋医学に「活を入れる」役割がある

 私が中西医結合によるがん治療を旗印にして、病院を設立したのが1982年。いまから40年前になります。それまで外科医として西洋医学一辺倒だった私が、なぜ東洋医学に着目することになったのか。

 その理由を説明するのには、まずは西洋医学と東洋医学の違いをお話しする必要があります。この二つは同じ医学でありながら、病気に対するアプローチがまったく違っているのです。

 西洋医学は、ローマ帝国時代の名医ガレノスに端を発し、19世紀のフランスの細菌学者ルイ・パスツールによって頂点を極めた分析的医学を基調としています。

 まずは、体のどの部分が、どのように故障しているかを、生理学、病理学、生化学、細菌学、解剖学などの基礎医学を駆使して分析します。その上で、体の一部に生じた故障を内科学、外科学、婦人科学などの臨床医学で、あたかも器械を修理するように修復していくのです。悪いところを取り除いてしまう外科的治療などはまさにそれの真骨頂だといえます。

 一方で東洋医学の代表、中国医学では、診断のことを弁証といいます。この弁証は西洋医学のように臓器の故障を見つけるのではありません。四診、八綱、臓腑、病因、病機など中医学の基礎理論にしたがって、病人のあらわす体質、病状を見極めるのです。それは、どこが悪いかを見つけるのではなく、どのように生命の有り様が歪んでいるかを弁別するのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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