室井佑月・作家
室井佑月・作家

 作家・室井佑月氏は、日本政府がウクライナからの避難民を受け入れる姿勢に希望を感じている。

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 なにも思想は右と左ばかりでないだろうが、このところあたしは、一部の右の人と一部の左の人が大嫌いになってしまった。

 ロシアのウクライナ侵攻。ここぞとばかりに、日本も核を持つべきだと語る人、アメリカ憎しのためロシアを味方したりする人。どちらも識者と呼ばれる者だったりするのでたちが悪い。

 戦争では多くの犠牲者が出る。それを知らない人はいるのか? なのに、今起きている戦争さえ、自分たちの活動に利用しようとする人たちには、吐き気を催す。

 といっても、自分だって偉そうなことはいえない。この問題に対しニュースを観たり、新聞を読んだりすると苦しい気持ちになる。が、夕飯の食材を買いにスーパーへいったりしているときは忘れている。

 スーパーには変わらず食材が置かれている。今夜のメインを肉にしようか魚にしようか考えているとき、ロシアやウクライナに住む戦争に巻き込まれている人たちのことは正直、頭にない。

 けれど、また新しいニュースに触れ、今起きている人の命が軽んじられる現実や、それさえ利用しようとする人、遠い国の戦争を心の底から理解できない、リアルとして捉えられない自分に、いら立つ。

 そんな中、救いとなるようなニュースがあった。3月4日付の「読売新聞」で「避難民受け入れ、政府が積極姿勢」という記事に書かれてあった。

「政府は、ロシアに侵攻されたウクライナからの避難民受け入れに積極的な姿勢を見せている。財政支援にとどまらない貢献策を示し、連帯のメッセージを打ち出す。避難民は現時点では政府が難民条約に基づき定める難民要件を満たさないため、難民として認定するかどうかが今後の検討課題となりそうだ」

 どうか一刻も早く、難民を受け入れてくれ。ウクライナから国外への避難民は、100万人を超えたともいわれている。

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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