「がん防災マニュアル」は、「応援団」のホームページから申し込める
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 今や2人に1人ががんになる時代。いつ、だれの身に起きてもおかしくない。ならば、災害と同じように防災として考えよう。普段から備えておくことで、「もしも」の際にも慌てず対処したい。

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 2021年8月に乳がんと診断されたセミナー講師の市川直子さん(61)。セミナー後、受講者に病気のことを明かした際、そのなかの一人から聞いたのが、「がん防災」という言葉だった。

「何より“防災”っていうコンセプトがすごいと思ったんです。さっそくネットで調べたら、『がん防災マニュアル』の冊子があることを知って、すぐに取り寄せました」

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 がんが見つかってから、自分の病気について知りたいと、市川さんは図書館にある乳がんに関する本を片っ端から読んだり、ネットでもいろいろと調べたりした。もちろんそうした情報はためになったが、がん防災の冊子はそういう類いの本とはひと味違っていたという。

「一口でいえば、かゆいところに手が届く本。読むことで冷静になることができました」

 手術を終えて退院すると、冊子を追加で20冊ほど取り寄せ、友人やバンド仲間らに配った。「がんにかかってから読んでもためになるけれど、できればがんじゃない人たちにこそ、この冊子が必要だと思った」と市川さんは言う。

 細胞分裂の際のコピーエラーで起こるとされるがん。年齢とともにがんになる確率が上がり、超高齢社会を迎えた日本では、2人に1人ががんになる時代だ。家族や職場、友人のなかにがん患者や経験者がいるのが、今では当たり前となっている。

 がんはいつやってきてもおかしくないからこそ、いざというときのために備えよう──。これが、がん防災の基本的なスタンスだ。この言葉を生み出したのは、宮崎善仁会病院(宮崎市)の押川勝太郎(しょうたろう)医師。現在、動画サイト「がん防災チャンネル」などでがん情報を発信してもいる現役の腫瘍内科医だ。

 これまで1万人以上のがん患者と対話し、3千回以上のセカンドオピニオンに応じているという押川医師。そのなかで強く感じたのは、多くの患者は「実際にがんにかかるまで、ひとごとだった」と話している点だ。がんが“身近な問題”として広く認知されていない。

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