2013年のフィギュアスケート・NHK杯に出場したタチアナ・ボロソジャル(左)
2013年のフィギュアスケート・NHK杯に出場したタチアナ・ボロソジャル(左)

 ロシアによるウクライナ侵攻は、スポーツの世界にも大きな波紋を呼び起こしている。侵攻が強行されたのは、2月24日。「平和の祭典」たる北京五輪が閉幕した直後のことだ。 

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 2021年12月、国連総会は「オリンピック休戦協定」を採択した。この決議案は、北京五輪開幕7日前の1月28日からパラリンピック閉幕7日後の3月20日までの間、世界のあらゆる紛争の休戦を求める、という内容のものだ。1993年、翌年のリレハンメル五輪に先立ち国連総会の議題として取り上げられて以来、五輪開催前には慣例として採択されることになっている。 

 国際オリンピック委員会(IOC)は、この協定を破ったとして、ロシア政府に対する強い非難を表明している。2月28日には、「国際スポーツ連盟およびスポーツイベント主催者は、ロシアおよびベラルーシのアスリートおよび役員の国際大会への参加を招待または許可しないことを推奨する」との声明を発表した。

  IOCのこの宣言には国際法上の拘束力こそ無いが、事実上、ロシアの各競技の選手たちが国際大会に出場する道は閉ざされたと言っていい。3月1日には、FIFA(国際サッカー連盟)およびISU(国際スケート連盟)が、大会からのロシア選手排除を発表した。世界フィギュアスケート選手権は21日からフランス・モンペリエで開催されるが、2日に公開された出場選手リストの中に、ロシア選手の名は無い。 

 ロシアは、2014年ソチ五輪の開催決定時から、国を挙げて冬季競技の選手育成に尽力してきた。フィギュアスケートについて言えば、ソチ五輪では団体・女子シングル・ペアの3種目で金メダル。次の平昌五輪でも、ザキトワの金メダルなど複数のメダルを獲得し、成果を上げている。今回の北京五輪では、団体で金(但しドーピング問題により暫定)、女子で金・銀、ペアで銀・銅、アイスダンスで銀と、正に「王国」の名に相応しい席巻ぶりだった。 

 この最強軍団が参加不可能となると、「世界選手権」としての格と意義に疑念が生じかねない。ロシアの選手が不在の中で順位を得ても、それが必ずしも実勢を示しているとは限らない、という事になってしまうのだ。 

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世界選手権など除外にプルシェンコは異論