東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、今シーズンで「世代交代」が行われるか否かに注目する。

【写真】練習試合に先発した楽天の田中将大投手

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 北京五輪が終わった。アスリートの方々が作ったスポーツ熱を野球界もいただいて開幕に向かっていきたい。プロ野球の選手はアスリートの姿に大いに刺激を受けただろうし、ぜひ熱いシーズンを迎えてもらいたい。

 今年は「世代交代が行われるか否か」に焦点が集まる年になろう。ベテランの域に達した32歳の巨人・菅野智之、33歳の楽天田中将大、そして中堅となった29歳のソフトバンク・千賀滉大といった球界の先頭を走ってきた投手が、存在感を示せるかどうか。まずはそこに注目している。

練習試合に先発した楽天の田中将大。存在感を示せるか=2月22日、沖縄県浦添市
練習試合に先発した楽天の田中将大。存在感を示せるか=2月22日、沖縄県浦添市

 プロ野球選手は10年前後、一線で投げてくると、必ずどこかにおかしな箇所が出てくる。そこを乗り越えて、もう一度、エネルギッシュな投球を取り戻せるかどうか。30歳から35歳までの期間をうまく乗り越えていかないと、40歳近くまで戦うことは難しくなる。どうしても20代の頃のような、馬力を取り戻すことを考えがちだが、そこを追い求めるのは理想として当然だとして、今の自分の状態、体と繊細に対話する、といったことが必要になる。状況によっては、モデルチェンジへの準備といったところだろうか。エネルギーの使い方も考える必要が出てくる。

 今の野球界は打高投低とも言われている。だから、かつてのような「変化球投手へのモデルチェンジ」も容易にはいかないだろう。150キロ超のパワーピッチで鳴らした投手が140キロの直球をいかに速く見せるか……といった単純なことではない。ただ、菅野や田中といった投手が、令和の時代に40歳前後まで一線で活躍することは、今後の投手の未来の命運を握るといっても過言ではない。名球会は200勝を基準にしているが、ぜひそこをクリアしていくために、野球人生の過渡期にさしかかったところを乗り越えてもらいたい。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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