2月17日、北京五輪フィギュアスケート・女子フリーの演技をする坂本花織
2月17日、北京五輪フィギュアスケート・女子フリーの演技をする坂本花織

 2月17日、北京五輪フィギュアスケートの女子フリープログラム(FP)が首都体育館で行われた。ドーピング問題の霧が晴れぬ中、ショートプログラム(SP)に続く自己ベストの演技で銅メダルを獲得したのが日本の坂本花織だ。

【写真】記者会見後の会見で笑顔を見せる坂本花織

 昨年10月、北京の同じ会場で開催されたアジアンオープントロフィー。ロシア女子が一人も参加せず、勝てるはずだったこの大会で、坂本は表彰台の中央を逃した。ショートプログラムで首位に立ちながら、フリーで精彩を欠き125.58点。8.87ポイント差をひっくり返され、優勝を三原舞依に譲った。

 坂本が苦労していたのは、振付師のブノワ・リショーが彼女に与えた難解なプログラム。ドキュメンタリー映画のサウンドトラックを中心に、女性の抑圧からの解放や自立、自己の尊厳の再確認を訴える、メッセージ性の強い4分間だ。コロナ禍で対面での振付もままならない中、8月の地方大会では3年前のフリー「ピアノ・レッスン」を再演。この試合ではノーミスの演技で優勝したことから、一時はプログラムを変更することも考えたという。

 しかし、逡巡の時間は短かった。リショー氏の強い勧めもあったが、何よりも坂本本人が、この難プログラムと共に五輪シーズンを戦い抜くことを決意したのだ。

 苦闘の成果は、北京の氷の上に表れた。アジアントロフィーとの最大の差は、 出来栄え点だ。10月にはトータルで6.97点しか付かなかったGOEだが、今回は16.88ポイントを稼ぎ出している。「完成度」をターゲットにひたすら積んできた鍛錬が、正しく結実した証だ。

 一つ一つの要素に対して「良い出来栄え」と評価されれば、当然演技全体の構成点も上がる。特に、スケーティングスキルについては、フリー滑走全25名の中で最高の評価を得た。技術点のみに依存することなく、プログラム全体の完成度をひたすらに追求した結果が、フリーでの自己ベスト3点更新という数字に表れている。

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「異様な雰囲気」乗り越えた同級生コンビ