帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「睡眠の工夫」。

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【不眠】ポイント
(1)貝原益軒『養生訓』によると、睡眠は長くなくていい
(2)夜ダメなら昼に数秒や1分の仮眠でも効果がある
(3)私にはアミノ酸のグリシンのサプリがよく効いた

 睡眠については、これまでも何回か書いてきました。ひとつは、貝原益軒の『養生訓』では、睡眠は長くなくていいと説いているという話です。むしろ、養生のためには睡眠を抑えなければいけないと語っているのですから意外です。いつの間にか、理想の睡眠時間は8時間となって、それよりも少ないと気にしてしまう人が多いようです。しかし、歳をとれば睡眠時間が短くなって当然なのです。70歳を過ぎると、5時間台が普通という統計もあります。

 また、認知症と睡眠の関係についても書きました。こちらは睡眠によりアミロイドβを排出できないと、アルツハイマー型認知症の引き金になるという話なのです。でも歳をとると睡眠の量は減るので、ある程度のアミロイドβの沈着はあきらめざるを得ません。朗報は、昼寝をすると、認知症の発症リスクを下げるというものでした。

 この昼寝(仮眠)の効果については、睡眠の専門医が書いた『朝5時起きが習慣になる5時間快眠法』(坪田聡著、ダイヤモンド社)という本でも詳しく説明されています。それによると、人間は本来、1日に複数回寝ていたのだそうです。多くの動物が何回も寝る「多相睡眠」で、それが普通だというのです。

 また仮眠には【1】ナノ・ナップ(一瞬~数秒の仮眠)【2】マイクロ・ナップ(1分ほどの仮眠)【3】ミニ・ナップ(10分ほどの仮眠)【4】パワー・ナップ(20分の仮眠)【5】ホリデー・ナップ(休日の90分の仮眠)の5種類があって、いずれも脳に対して効果があるというのです。数秒や1分でも仮眠として成り立つとは知りませんでした。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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