※イラストはイメージです (GettyImages)
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「痔」や「お尻のかゆみ」は環境や生活環境によって引き起こされる病気だ。在宅勤務によるデスクワークが増えたことで、痔に悩む人も増えているという。

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 痔で悩まされるのは、痛みや出血だけではない。夜に眠れないほどの「お尻のかゆみ」に苦しむ人もいる。

 亀田総合病院消化器外科部長の角田明良医師は、「お尻のかゆみは、痔などの肛門疾患が原因であることが圧倒的に多い」と話す。

「かゆみの原因は、痔の種類によっても異なります。例えば、いぼ痔で特に多いのは『脱肛』です。排便時に、内痔核が外に飛び出してくる症状ですが、そのときに腸内の粘液も外に出てきてしまう。粘液が肛門の周りに付着したままだと、糞便中に存在するビリルビンなどの刺激によってかゆみが引き起こされます。切れ痔の場合は、治る過程でかゆみが出ることが多いですね。痔瘻の場合もいぼ痔と同じく、肛門から肛門周辺の皮膚に通ずるトンネルを通って、腸内の粘液が漏れ出すことが、かゆみの原因となります」

 一方で、環境や生活習慣が原因で、かゆみが引き起こされる場合もある。特に高齢者に多いのが、「尿漏れ、便漏れ」によるかゆみだ。

「加齢とともに尿道や肛門の筋肉は衰え、緩くなっていきます。すると、中腰になるなど腹圧がかかった拍子に尿や便が漏れてしまうことがある。それが頻繁に起こると、尿や便自体が肛門周辺の皮膚を刺激してかゆくなります」

 尿漏れ、便漏れ対策におむつを着用している高齢者も多いが、漏れたまま長時間放置していると、かえって症状を悪化させてしまうケースもある。

 都内でホームヘルパーをしている40代の女性は、「長時間おむつをつけっぱなしにしているせいで、お尻がかぶれている人が少なくない」と話す。

「特に寝たきりの人は、尿や便が出ても、自分ですぐに取り換えることができないので、お尻がかぶれやすい。私が担当している80代女性もお尻に湿疹ができてしまい『かゆくて眠れない』と悩んでいました」

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