世界的なダンサーとして活躍する田中泯さん。犬童一心監督の最新作「名付けようのない踊り」では、76年の生き様と踊りを見せてくれた。では、私生活や交友関係はいかなるものなのか。
【前編/田中泯、自身のドキュメンタリーで再確認 「名付けようのない物事と生きていく」】より続く
プライベートの過ごし方を聞いているときに、お酒の話になった。ある時期までは、1日で1升瓶を空けることが普通だったが、ワークショップの仕事を頼まれて、1カ月半アメリカで過ごすことになり、その間は酒を断つ決心をした。
「アメリカから帰ってきたら、無事に酒量をコントロールできるようになっていました。それが60歳ぐらいのときです。『たそがれ清兵衛』が57歳ぐらいなんだけど、一度、真田(広之)さんと2人、ベロンベロンに酔っ払ってしまったことがありました。まだクランクインする前でしたが、一緒に剣道の先生のところに行って、真剣を使って稽古をつけてもらう予定だったんです。でも、2人からは、酒の匂いがプンプン(笑)。真田さんは、『やります!』って言って、刀を構えたものの、刃先が揺れてしまって、その日は稽古になりませんでした(笑)」
さすがに反省した真田さんと泯さんは、撮影に入ってからは、「今日は何を飲みますか?」「水割り2杯まで!」と、その日に飲む量を2人で約束して、タフな撮影期間を真面目に乗り切ったという。
(菊地陽子、構成/長沢明)
田中泯(たなか・みん)/1945年生まれ。クラシックバレエとアメリカンモダンダンスを10年間学び、74年から独自の舞踊活動を開始。78年にパリ秋芸術祭「間-日本の時空間」展(ルーブル装飾美術館)で海外デビューを飾る。2002年「たそがれ清兵衛」でスクリーンデビュー。以降、日本映画のみならず、ハリウッドからアジアまで多彩な作品に出演している。
※週刊朝日 2022年2月4日号より抜粋