東尾修
東尾修

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、プロ10年目を迎えた阪神の藤浪晋太郎選手の課題を指摘する。

【写真】藤浪晋太郎選手

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 阪神の藤浪晋太郎が、巨人・菅野智之と合同自主トレを行っている。日本ハムの清宮幸太郎は、ソフトバンクの柳田悠岐に教えを受けている。球団内でくすぶっている選手が新たな刺激を外に求める。球団間の垣根はもうないと言っていいだろう。

 藤浪は、10年目を迎えた。危機感からの行動だろう。菅野からは「軸足がつぶれてしまうような動作が強い」と指摘されたという。軸足の大切さは言うまでもない。どんな投手でも軸足、右投手なら右足一本で立ったときに安定しなければ、そこから先の投球動作が一定であっても安定するわけがない。さらに軸足一本で立てても、投球動作の中で、ブレている部分があれば、リリースは一定しない。今は映像やデータを駆使して理詰めで組み立てていく時代だ。

阪神・藤浪。10年目の飛躍を果たせるか=代表撮影
阪神・藤浪。10年目の飛躍を果たせるか=代表撮影

 マウンド上で何かが数センチずれれば、本塁につくころには何十センチの違いにもなる。藤浪がこれまでのように、シンプルに腕を強く振るだけでは、球威が衰えたときに勝負にならない。

 良いときというのは、何も考えなくとも自然とバランスが取れている。だが、疲労も含めてバランスが崩れたときに、筋肉と基本動作のどこがどう連動しているのかを理解しないといけない。「再現性」という言葉がよく使われるけど、例えば100球同じフォームで投げ続けられる投手は、当然、制球力は安定する。

 藤浪について思うことは、トレーニング理論や技術的な部分は菅野から聞けるとして、しっかりと自分の感覚に落とし込み、取捨選択を行うことだ。そして「心技体」のバランスもしっかり取ることが大切だろう。菅野という球界最高の技術、理論を持っている投手に触れる中で、どこで「心技体」のバランスを取っているのか、そういったことも、ぜひ感じてもらいたいね。

 2022年。日本テレビのスポーツ番組から江川卓が卒業、TBSの「サンデーモーニング」のスポーツコーナーのレギュラーを務めた張本勲さんも卒業した。日本テレビは高橋由伸、TBSは上原浩治が引き継いだそうだが、評論家一つとっても新しい風が吹いてきている。藤浪も、もう待ってはくれない。ここから先の10年があるかどうかは、今にかかっている。

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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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