帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「いのちを感じる」。

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【日常的に】ポイント
(1)いのちを感じることは、自らのいのちを高めること
(2)毎日見る窓の外の風景からもいのちを感じられる
(3)地球上にあふれているいのちを守っていくためには

 以前、パンダのシンシンが出産する情景をテレビで見て感動した話を書きました(2021年9月3日号)。あの大きなシンシンのからだから、片手にのるくらいのとても小さい赤ちゃんパンダが生まれたのです。毛がまったくないつるつるの赤ちゃんが動いているのを見て「ああ、これぞいのち!」と感じました。

 いのちを感じるというのは、とても大事なことです。いのちを感じることによって、自分自身のいのちとの共鳴が生まれると思うのです。つまり、いのちを感じることは、自らのいのちを高めることにつながります。

 パンダの赤ちゃんの誕生は、まさに特別な瞬間ですが、日常的にいのちを感じることもできます。例えば、毎日見る窓の外の風景。私は病院2階の自室の窓から、いつも眼下に広がる田園風景を眺めています。

 まずは5月の連休が終わる頃。すべての田に水がはられ、すかさず現れるのが田毎の月です。何面もの田に同時に月が映るのです。じつに美しい。かつ躍動感があります。このとき、大自然のいのちを感じます。

 続いて田植えです。いまは昔と違って機械を使うので、3、4日であたり一面が、緑の世界になります。まさに大地の息吹です。それが、どんどん成長していくのです。

 やがて先端部が黄色くなってきます。稲穂の登場です。あたり一面が稲穂だらけになります。

 余談ですが、そのシーンを見るたびに思い出す言葉が「実るほど頭を垂れる稲穂かな」です。ご存知の通り、立派に成長した人ほど、頭が低くて謙虚であるという意味ですが、忘れてはいけないことですね。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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