春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「パンダ」。

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 正月の寄席の掛け持ちで現在、私はいっぱいいっぱい。

 上野の街を歩いていると、あちこちに『パンダ』という単語が目に入りますね。看板、アーケード、店頭のポップ、貼り紙にパンダの群れ。視力2.0の人なら視界に30~50パンダくらい入るのでは。ちなみにパンダは単位。パンダが三つで1パンダとします。

「パンダの街」「パンダの山」「パンダの池」「パンダの丘」「パンダの森」「パンダの小道」「パンダの海」「パンダケ岳」「パンダの富士」「108代横綱・パンダ」「日大パンダ部」「パンダ理事長」「ちゃんこパンダ」……なんてのが上野には溢れています。

「パンダの出産」「パンダの臨月」「パンダが育休」「双子のパンダ誕生」「双子のフランケンシュタイン・パンダとガイラ」「獣神パンダーライガー」「狂い咲きパンダーロード」とかね。

「パンダ焼き」「パンダ鍋」「パンダ串盛り、塩がオススメです」「大将、パンダを握りで!」「パンダセット二つ、一つはパンダ少なめにしてください」「シャリキンでパンダ炭酸割り、氷なしで」「あのー、こっちのパンダまだなんですけど!」なんてのも。

「パンダ祭り」「パンダフェス」「パンダ運動会」「街コンパンダ」「痛快パンダ通り」「パンダちゃんといっしょ」「パンダのくせに」「うちのパンダにかぎって……」「貴様、パンダきどりか?」「パンダの都合でして」「もしもし、パンダですけど」「あー、お前、あのときのパンダか」「パンダの見てる目の前で!?」「立憲パンダ党」「パンダびと」「パンダくん、ハイ!」「パンダビューイング」「瀬戸内パンダ」「パンダ寂聴」「パンダ、一時間八百円!」「川浜高校対相模一高、109対パンダ」「パンダ、この野郎!」「もし、君がOKなら黄色いパンダを掲げておいてくれないか?」などなど。まぁ、なんとパンダの多いこと。まさにパンダにおんぶに抱っこ。……いかん。『ゲシュタルト崩壊』を起こしそうになりました。

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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