左から、今井眞一郎氏、出井伸之氏(撮影/写真部・高野楓菜)/取材協力・ストリングスホテル東京インターコンチネンタル/The Strings by InterContinental Tokyo
左から、今井眞一郎氏、出井伸之氏(撮影/写真部・高野楓菜)/取材協力・ストリングスホテル東京インターコンチネンタル/The Strings by InterContinental Tokyo

今井:まさに、私はこの7月から、そうしたコンセプトで東京に開業したクリニックの理事に就任したところなんです。将来的には健康なうちに体がどれくらい老化しているかを検査して必要な手を打つことで、病気を未然に防ぐこともできるようになると考えています。

出井:そうした抗老化研究が進んで人の人生が長くなると、社会が大きく変わりますよね。『変わり続ける』という僕の本にも書いたのですが、企業の寿命と、人間の寿命、今井先生はどちらが長いと思いますか?

今井:100年、200年と続く老舗企業もありますから……やはり企業のほうが長いイメージです。

出井:ところがそうでもないんです。日本の企業は世界から見ると長寿も多いほうですが、数え方は色々あるにせよ、ならしてみると、だいたい平均寿命は38年ぐらいと言われます。

今井:そうでしたか!

出井:企業の「旬」というと、もっと短くなり、平均十数年という説もある。ビジネスパーソンとしての会社人生は50年以上あるわけですから、今でさえ、転職や独立をしても生きていけるように、個としての自分を成長させないとならない。この先、抗老化研究が進んで人生が長くなると、さらに個になる時間は延びていくでしょう。そうした時代に備えて、まず社会的に仕組みを変えていくことも必要になりますね。

今井:そうですね。一方で、高齢化と少子化が待ったなしで進む日本では、健康寿命を延ばしてお年寄りが元気で生きられる社会をつくらないと、医療費の増大や働き手不足で立ちいかなくなる。難しい課題ですが、日本は世界に先駆けて少子高齢化を迎える健康長寿国家のモデルとして、世界をリードする可能性を秘めていると思います。

出井:中国の大学や企業のアドバイザーもやっていますが、中国はひとりっ子政策のツケが回ってきている。これからの少子高齢化社会は、中国にとっても脅威ですよね。

今井:そうなんです。例えば今、深センはロボティクスや自動運転など、最先端技術の実験場のようになっていますよね。基礎研究の力が落ちている日本はどんどん水をあけられていますが、抗老化研究については、中国ではまだそれほど手が付けられていない。世界に先駆けてNMNの生産方法を開発したのも、製品化を果たしたのも日本の会社ですし、日本発の技術として世界をリードするものに育てていくチャンスがあると感じています。

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