「自分を抑え、悔いばかり重ねてきたと自嘲する男の残り少ない人生から、武士の矜持や残り火のような熱情を浮かび上がらせた傑作」(書評家・西上心太)。「さまざまな制限の中でいかにして生きていくのかを迷いながらも歩み、少しずつではあるが心が穏やかになっていくところに魅力を感じた」(有隣堂横浜駅西口店・加藤ルカ)

【ベスト3選出方法と総評】

 歴史・時代小説ベストは前回から上位3冊だけ順位を付けるベスト3に衣替えした。13回目となる今回は例年同様、文芸評論家や書評家、新聞・雑誌の書評担当者、編集者、書店員ら“本読みのプロ”にアンケートを送る形式で実施した。2020年11月から21年10月までに刊行された歴史・時代小説の中から、1人3作品ずつ推薦してもらって集計した。

 1位の米澤穂信はミステリー界で数々の賞を受け、『黒牢城』で山田風太郎賞を受賞した実力者。2位の今村翔吾は前回『じんかん』(山田風太郎賞)が1位に輝いたのに続いて上位に入った。3位の砂原浩太朗はデビュー2作目で舟橋聖一文学賞、本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞している。ベスト3に続く注目作として編集部が4作品を選んだ。『つまをめとらば』で直木賞を受賞したベテランの青山文平。怪奇やホラーも手がける朝松健。『信長の原理』など独自の視点が冴える垣根涼介。歴史と伝奇を書き分ける武内涼を推した。

週刊朝日  2022年1月7・14日号より抜粋