東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、プロ野球界にものような絶妙な距離感が必要だと指摘する。

【写真】日本ハムの新入団会見。新庄監督は選手とどう接していくか

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 猫と言うと、見知らぬ相手に自分の間合いを与えることはしない動物だなと思う。じっと距離をとって相手の気配をうかがい、その後に近づいたり、去ったりする。知らない相手にいきなり飛びかかることもない。そんな絶妙な距離感は、どんな世界でも必要なことだなと感じる。もちろん人付き合い、マネジメントにおいても、だ。

 令和となり、新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)する世の中となり、忘年会の存在意義も年々、問われるようになった。かつてはプライベートもともにし、お酒をくみかわしながら、お互いの考え方を理解していく。そんな濃厚な関係構築よりも、今は「猫」のような絶妙な距離感が人付き合いにも必要になったのだと、ふと感じる。

 チームスポーツの中でもシーズンの長いプロ野球界。家族よりも長くチームとして接することになる。10歳も年が違えば、価値観も異なるだろう。「距離感」を考えなければならない監督という職業は本当に大変だ。

 プロ野球界は12月15日に今年のMVP、新人王などの表彰式が行われ、今年の公式行事はすべて終了した。ここから2カ月オフに入るが、今は「オフ」なんてとるのは、ベテランだけだろう。日本ハムの新庄剛志監督がオフの時間の大切さを語っていたが、オフこそ、シーズン中にできない試みや、考え方を吸収する時間にあてないといけない。

 契約更改交渉も佳境だ。少し活躍すれば、給料が跳ね上がると同時に、近年はコロナ禍で観客動員もできず、成績の残せなかった選手は目を覆いたくなるようなダウン提示を受けるようになった。阪神の糸井嘉男が12月10日、1億円ダウンの推定年俸8500万円プラス出来高払いで契約更改した。40歳の糸井は会見で「率直にありがとう。来年もやらせてもらえるし、また勝負できるということなんで、率直にありがとうございます」と話したという。これだけ功績を残した選手でも「クビの恐怖」と闘う。

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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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