※写真はイメージです (GettyImages)
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 薬の品薄状態が続き、医師が代替薬を提案する現場も出始めている。単純に薬は置き換えられるというわけではなく、治療の中止や健康被害につながる場合もある。薬不足はいつまで続くのか。

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前編/相次ぐ不祥事で薬不足に 国の後発薬への切り替え政策が影響】より続く

 全国保険医団体連合会の住江憲勇会長は「厚労行政は対応が遅い。薬の提供の責任は製薬会社にあるというが、指導監督は厚労省だ」と話す。

 厚生労働省では「どの薬剤が足りないのか、調査を進めている」(医政局担当者)。薬を増産するにも、既存工場を夜間も稼働させると、労働基準法の問題などもあり、増産は限られるという。製造ラインの新設は「お金の問題や検証などで数年単位になる」(同)。後発薬(ジェネリック)メーカーは一つの製造ラインで複数の薬をつくっていることが多く、「なかなか増産できない」(同)という事情もある。

(週刊朝日2021年12月31日号より)
(週刊朝日2021年12月31日号より)

 足りない薬については、「関連学会とも連携し、他の薬(代替薬)でお願いしている」(同)。しかし、医療現場から、代替薬は患者への作用がまったく同じといえないとの声が相次ぐ。代替薬にした患者からは「眠れなくなった」などの声が、大阪府保険医協会のアンケート結果から出ていると同協会事務局の田川研さんは話す。千葉県保険医協会の吉川恵子事務局長は、代替薬に変更しても効果は同じではなく、「現場では患者さんの健康被害につながっていると国にも伝えた」という。

 全国保険医団体連合会の高本英司副会長は「代替品があるのでOKという問題でない」と話す。患者は長年服用する薬に安心感があり、「患者さんの気持ち、安心感をすり違えた問題」(高本さん)という。

薬不足問題により「全国で被害が出ている可能性がある」というのは全国保険医団体連合会の山崎利彦理事。山崎さんは山崎外科泌尿器科診療所(さいたま市)院長をしており、薬不足で「前立腺がんの治療をやめざるを得なくなった人が2人いる。危機的状況」と話す。

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