EV戦略について会見で説明する豊田社長
EV戦略について会見で説明する豊田社長

 トヨタ自動車が、電気自動車(EV)の2030年の世界販売目標を従来の200万台から、350万台へ引き上げた。ともすると「後ろ向き」とみられたEV戦略が、これで一気に加速する。

 12月14日に会見した豊田章男社長は「(割合ではなく)台数で評価してほしい」と訴えた。

 5月に公表した目標では、世界で1年間に販売する1千万台のうち、EVは燃料電池車(FCV)と合わせて200万台と説明していた。今回、EVだけで従来の1.75倍超に。これはスズキ1社分の年間販売台数を上回る規模だ。

 350万台のうち、100万台は高級車の「レクサス」ブランドとして、普及が先行する欧州と北米、中国で新車販売のすべてをEVにする。佐藤恒治・チーフブランディングオフィサーは「レクサスがEVのフロントランナーになる」と述べた。

 背景には、世界的な「EVシフト」の進展がある。ライバルのホンダは4月、40年に新車販売をすべてEVとFCVにすると発表。独フォルクスワーゲンは30年にEVの割合を今の5~6%から約50%に引き上げる。米テスラや中国勢など新興EVメーカーの攻勢も激しい。

 各国当局もクルマの脱炭素化を進める。欧州連合(EU)は7月、ガソリン車の新車販売を35年から事実上禁じる方針を打ち出した。

 米バイデン政権も8月、30年に新車販売の50%を、EVなどCO2を出さない「ゼロエミッション車」とする目標を掲げた。中国も、25年に新車販売のうちEVなど「新エネルギー車」の割合を25%にする。

 ただトヨタは、EVだけでなく、ハイブリッド車やFCV、水素エンジン車などの開発も進める「全方位戦略」は変えない方針。各国の政策や電力事情によっては、EVの普及が進んでも、トータルのCO2排出量は思うように減らない場合もあるからだ。EVは走行中はCO2を出さないが、エネルギー源の電気を作ったり、動力源の電池を作ったりする過程でCO2を排出する。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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